お決まりのあれです。



「っあぁもう次元!7時に起こしてっていったじゃんか!」

「起こしたよ俺は。8回も」
ばたばたと家中を走り回る恋人にコーヒーを傾ける俺はゆったりと返す。
「えぇ!?覚えてねぇよぉそんなん!」
ルパンは寝室とリビングをいったりきたりしながら、淡い水色のシャツの上に白のネクタイを締める。あの馬鹿まった俺のネクタイ使いやがって。

「…昨日の夜のことははっきり覚えてるんだけどなぁ」
「…っくだらねぇこといってねぇでさっさと支度しねぇかっ!」
勢いよくカップをテーブルにたたき付けると、「はぁい」なんて気の抜けるような声が俺の鼓膜を揺らした。昨日の夜?はいはい覚えてるよ覚えてますとも、俺だってまぁ楽しんだしさ、いやいやいいんだけどちょっと乗りすぎたな、調子に。…お陰で腰がいてぇ。
「ルパン飯は?」
「あーいいや、会社ついてからなんかテキトーに食うわ」
「そーかい、せっかくスープがうまくできたってのに」
「帰ってからいただくよ」

ルパンの準備があらかた整ったようなので、俺はいろんな意味で重い腰を持ち上げて玄関へ向かう。靴をはくために丸まった背中が見えた。薄いベージュのジャケット。紺のスラックス。黒の靴。
「ほら、こっちむけ」
「ん」
立ち上がりながら体を反転させ俺のほうを向く。
「ったく…ネクタイ曲がってる」
右にずれたタイに手を伸ばし、きゅ、と形を整える。
「人のもんは大事にしろよ」
「だぁってクローゼットん中もうごちゃまぜになってんだもん、どっちのかわかんないじゃん」
「俺はお前のもんわかるぞ」
「よく見てんねぇ俺のこと」
「ッ…良いようにとるな!」
胸の辺りを叩いた。ばしっと軽快な音が響く。
「…書類は?」
「持った」
「財布は?」
「持った」
「時計は?」
「つけた」
「忘れもんねぇな?」
「…あ、あった」
「なに…」

キス

「っ…ちょ次元っ!」

――されそうになったのを防いだ。

「お見通しなんだよ馬鹿!」
「だからってなんで俺の口手で抑えるわけ!?ずるい!」
ガキかお前は。
「ずるかねぇよ!散々したろ昨日」
「昨日は昨日。今日はまた0からなの!」
なんだそのカウント方式。
「ったく…つまんねーの…朝っぱらから会社行く気失せちまったぜ…!」
ぶつくさ言いながらルパンはドアノブに手をかけた。

――ったくしゃあねぇな

「んっ…?!」

肩つかんで無理矢理にこっちを向かせ、キスをした。


「っじげ」
「いってらっしゃい。…遅くなんなよ」


あぁ畜生、恥ずかしいったらねぇ

「っんだよ、なんか言っ…」
抱き寄せられたかと思うと、腰に腕回されて深いキスをされる。当然のように忍び入ってきた舌が逃げる俺のそれを捕まえると俺の舌を抱きしめるように絡みつき、ちゅう、と強く吸い付かれた。昨日のこともあって簡単にかくりと折れる俺の膝を庇うようにルパンは俺を抱きしめる。ぎゅうぎゅうと抱き合いながら酸欠になるような口づけをした。
「っおま、えな…!」
「どうしよ次元…会社行く気なくなった」
「行け馬鹿っ…!」





お決まりのあれです。
(だから嫌だったんだ!)









END











―――――――――
一般人同居ぱろ。
情事に及んだ次の日の朝。
「いってらっしゃいのキス」が日常なル次。…萌え!




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