この瞳には映らない



「ちょっと、聞いてる?」
「え、あ、あぁうん」
「嘘だー」
「…ごめん」
「ひっどいルパンってば」
「ごめんて、あんまり可愛いから君に見とれてたんだよ」
「っちょ、なにそれ、そうやっていえば許すと思ってるでしょ」
「うん。許してくれないの?」
「…許してあげる」
「だから好き」
「…ほんとずるい、ルパン」
「なんで、ずるいのは君でしょ。今日めちゃくちゃ可愛い。そんなんで出かけられると俺は困るなぁ」
「え?なんで?」
「他の奴に見られるじゃん」
「…馬鹿じゃないの」
「うん。馬鹿は嫌い?」
「嫌い!…でも、ルパンは…すき」
「知ってる」


俺は喉の奥で笑った。
彼女は唇で弧を描き、それは綺麗に笑みをつくる。
彼女の髪がふわりと揺れた。日光を抱きしめるように光る美しいブラック。くるりくるりと螺旋を形取る、心地好いウェーブ。嘘臭い偽物のくせっ毛。
「君の髪、好きだなぁ俺。触っていい?」
「いい、けど…ほんと好きだねルパン、髪触るの」
「好きだよ?だって可愛いじゃん。あ、でも君の髪だからかも」
(あいつは、長い髪は嫌いみたいだけど。)
彼女は照れたように目を伏せ、口をきゅ、と一文字で結ぶ。

この子は俺のことが好きだ。
だからなおさら、俺は俺が憎い。
(ほんとに、いつまで続けるんだか)

いつまでこんな。こんな、馬鹿みたいな茶番劇を。
一体どれだけの人間に偽りの愛を語ったか。そして、一体何人、これから偽りの愛を語るのか。

"なにやってんだルパン"

手に入らないあの無垢な笑みを、こんな、恋人ごっこの先に透かして。

「ねぇ、」
「ん?」
彼女の唇を奪う。
「っな、に」
「…ん?」
「何、すんの、」
「ごめん」
「思ってないでしょ」
「ばれた」
俺は笑う。
桃色のワンピースを着た彼女の奥に、目眩のするような、真っ暗なジャケットを着たお前を思いながら。




この瞳には映らない
(お前以外、誰も)











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