口づけのアルコール度数


 




またあの人は酔って帰ってきた


「っこら銭さん、コートくらい…っ」
どさり、と帰ってくるなり俺に抱き着いて体重を預けてくる。
「…酔ってる」
「こんなの酔ったとはいわねぇ…」
「まーた飲み会か」
「…接待だよ」
「サラリーマンじゃあるめぇし…たまには早く…っ」
たまには早く帰ってこいっていおうとしたのに、言葉尻口づけに塞がれてなんにもいえなくなった。
「んっ…ちょ、やめろって…!」
ほんとはそういうことを期待して家で待っていたんだけど、酔って帰ってきた奴とセックスなんてしたいもんか。するりと伸びてきた大きな手に腰を引き寄せられて肩が跳ねる。
(付き合い、とか、わかっけどさ…)
たまにお互いの時間が合うときくらい、断ってくれたってばちあたんねーんじゃないのか。
「っく…ふ、銭さ…」
「…次元…」
啄むようなキスのあと、あの甘く低い声で呼ばれて理性なんざ保っていられるか。
(この酔っ払い…っ!)
銭さんの後ろに回した腕でこの人を必死に引き寄せて深く深く口づける。ぱちぱちと舌先で弾けるような感覚がして、銭さんの吐息はアルコールをたっぷり溶かしているようだった。
「っぜにさ…」
「…なんて顔しやがる…誘ってるみたいだぜ…?」
「…馬鹿、誘ってんだよ」



この人の舌越しに伝わるアルコールは、これ以上ない美酒だった。







「っく…ぅ…っ」
銭さんの肩に顔を埋めて、ぎりっと歯を噛み締めた。
「声堪えてんじゃねぇよ」
「だ、って…変な声出る…っ…ぁ…もっ…!ゆっくり…っ」
酒に酔った銭さんはいつもと段違いにえろくて、俺を溺れさせるような甘いことを言う。
「変じゃねぇ…可愛いよ次元」
「はぁっ…!や、んなこと言うな…っ」
耳元で囁かれて電気が走る。薄い布団の上で俺を乱暴に抱くその人が好きでたまらない。
「っ…俺は嘘をつかねぇよ、お前が居なきゃ家になんか帰らねぇ」
「…っこーちゃんの馬鹿…っ!」
「馬鹿で結構」

銭さんは俺にまた口づけると、舌を巧にからめ、呼吸がくるしくなるほど長いキスをした。
あぁもう、好きだ。


口づけのアルコール度数
(恋という美酒を、一度飲んだらやめられない)






END
















即席ですが、銭次の日おめでとう!


120514

prev next





 


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -