早春賦



「…で、話ってなんだよ」
とある昼下がり、急用があると呼びとめられたルパン。
ぎい…と重厚に作られた観音開きの扉を開けると、ルパンは中に居た人物―ルパンの父親へぶっきらぼうに声をかけた。





それは、ルパンの父親―ルパン二世の一言から始まる。
「三世―お前も大きくなった。狭い帝国の中で過ごすだけではなく、
そろそろ外の景色も知る必要がある時期だろう」
二世は自分が決めたことに対して反発をすることにひどく激怒する性分であった。
ルパンは渋々ながらそれを受け入れる事しか選択肢は無かったのである。





旅立ちは一週間後―そう心に決めたルパンは、必要最低限の荷物をまとめて直ぐ様出られるように支度を済ませた。
しかし、肝心の一番伝えなければいけない相手―次元には、その事をなかなか伝えられずにいた。














「じーげん」
とある日の昼下がり、いつものように木の下で読書をしている次元にルパンは横から声をかける。
「―なんでしょう」
しおりがわりに落ちていた新緑の葉を頁の間にはさむと、次元は口角をあげにこりとルパンの方向へと向き直る。
「あのさあ、この後時間空いてる?」


「朝日、朝焼け、朝ぼらけー」
「『あ』の付く言葉」
「そうそう。あとなんかあったかなあ。ああ、ある!アイスクリーム…三段重ね」
「少し溶けたの」
「そう、それがいい。あとはそうだなあ」
「あんこのつまったどら焼き」
「アーモンドプードルのフィナンシェ。食べたいなあ」
そんな事を話しながら、二人は肩を並べてゆっくりと散歩をする。






「あと何があるだろう。あ、あ…」
次元が落ちていた小石を蹴り上げる。
「…じゃあ、これはどう」
すると、その小石を拾い上げるとルパンは明後日の方向へそれを投げた。
「―愛してる」
そう、次元の耳元でささやいて。













「次元は、さ。俺のこと好きだろう」
「…な、なにを仰っているのです…」
「知ってんだよ、とうの昔から。けどお前ウブちゃんだからさ、俺がお前の言葉を代弁してやったわけ」
投げた石の方向から視線を隣にいる次元のへ向けると、ルパンは唐突に羽織っていたジャケットを脱ぎだした。
その光景に、次元の視線が泳ぐ。目元は明らかに赤みを帯びていて、これから起きるであろう事をどうやら察知したようであった。












「こ、こんなところでっ、駄目です!だっ、誰か来たら…っ」
「誰?―誰も来ないよ、こんなところ」
ルパンはいつも次元が一人で佇む木陰で、ゆっくりと次元を押し倒す。
そこは次元が一人になりたい時に来る場所で、次元以外の人間は滅多に訪れることはなかった。
こういった紳士的なルパンは初めてだからなのであろうか、次元は体を硬直させる。
そんな硬直した体をルパンの指が優しく撫でていくと、少しづつではあるが次元の緊張もほぐれてきた。






次元の顕になっている白い太腿に、するりとルパンの指が滑る。
そして撫で上げた内股に少し噛み付くと、鬱血状態の花が咲く。
「…っ」
「痛い?」
慣れない痛みに眉をひそめた次元に、ルパンは優しい声をかけた。
「だ、大丈夫です…んっ」
「無理なら止めるけど…」
普段とは違って大人びて見えるルパンに、普段落ち着いている次元の鼓動が少し早くなる。
「―続け、て…く、ださ…」
次元の少し開かれた膝の間に体を入れると、ルパンは艶めいた次元の唇に自身の唇を合わせる。
半開きになった歯と歯の間にすかさず舌を絡めると、呼吸を飲み込むようにルパンは次元の唇を貪った。

















「次元、ちょっと痛いかもしれないけどゆっくり息を吐いて」
そしてルパンは次元の下半身の着衣をすべて脱がせると、指先でつぷ…と秘部に這わせる。
唾で濡らしただけの指先はやはり痛いのか、先程とは違う苦痛の顔で次元はルパンを見上げた。
「ここ、使うことなんてないもんな…」
「…んせ、様…」
「でも―慣らさないと入らないから」
暫く指先でそこを慣らした後、ルパンは熱く上がる次元の吐息を見て出来上がった自分自身を挿入した。






「ん、んん―」
「…ゆっくり動くから。次元も俺にあわせて」
ゴムをつけたそれが中で蠢く感触など、今まで次元は味わったことがなかった。
しかし擦れた痛みで最初は辛かったものの、上で動くルパンの良さげな顔につられそれもだんだんと快感へ変化していく。
「ん、は…んなのはじ、めて―すご…」
幾多の女を知っているルパンでも、男を知る事は実際初めてで―。
次元も男に抱かれる事など経験が無かったからなのか、息を合わせるタイミングが掴めずにいた。
ただ、唇を合わせるたびにそれはそれとなく判ってきたのであった―愛おしい思いとそれはシンクロしているという事を。





「ぁ、あ…三世、様…そこ…」
「―こ、ここ…」
「は、い…なんだかちが、…ふ…」
次元の重く閉じていた瞼が深く揺れる。―そこが、次元の前立腺だと知ったルパンは、キラキラと首筋に流れる汗を舌で拭いながら
そこを執拗に攻め続けた。
流れる涙は生理的に生まれてくるものなのだろうか、それとも…嬉しさがこみ上げて流れてくるものなのであろうか。
ただルパンは、次元のその涙がとても綺麗なものだとは知っていた。





いつの間にか、自分もまた次元に溺れているという事実も―。












下処理も終わり、次元は流れている汗や涙をガーゼのハンカチで拭った。
汗をかいた後が冷たくて心地よい。
そしてルパンの顔にも丁寧に新しいハンカチを当てると、気持ち良さげな顔でルパンは瞳を閉じる。





「―俺、さ…旅にでるんだ。あと二、三日もすれば…だから、せめて土産に次元には思い出を残して行こうと思って」
生い茂った草の中で二人で寝転ぶと、次元の頬にルパンは指を滑らせる。
冷たい指先に次元は掌を合わせると、少しぎこちなさそうに次元は笑った。
「それは、こちらを出られる…ということでしょうか」
「ああ―親父の命令だから」
「…」
「どったの次元」
「―私も、貴方と共に行きます。この身が朽ち果てようとも、私は貴方様の側にいると決めたのですから」








風が次元の前髪をさらう。そこから見えた瞳は、何かを悟ったような色を帯びていた。
先ほどまでとは違う、少し大人に近づいていた次元にルパンは思わず声を詰まらせる。
そして、自分が次元をそう仕立て上げたのだと思うと…少し目頭が熱くなった。











「強いな、次元は」
「え?」
「―俺より強いのかも」
ルパンは次元にそう笑いかけると、ちゅ、と次元の頬に誤魔化すようなキスをする。








「あ、ひこうき雲!」
「ああ、本当ですね」





いつかまた、一人前になった時―二人でこの場で笑い合っていられるように、そう願いながら。





<終>










―――――――――――

九十九さんから頂きました…!
涙で前が見えないよ…!
私がどれだけ九十九さんを好きかって、わかるか、おいお前(誰)!
ジャリ次可愛い…好き…
九十九さんの書かれる小説は、CPによって雰囲気が全然違うのが魅力だと思います。大人っぽくてエロチックな銭次小説に対して、ジャリル次は風が吹き抜けるみたいな爽やかさと、時間が過ぎ去っていく切なさが溢れてて、大好きです。
ずっとずっと見に行っていたサイト主でいらっしゃる九十九さんと相互していただけるだなんて、しかも相互記念に小説をいただけるだなんて、幸せ過ぎて、もう
ありがとうございます
ほんとに…好き…!
ありがとうございました!!


お持ち帰り厳禁。



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