くたびれたシャツみたいな愛がいい 3




「……例えば、仮にこれから何十年と一緒に生きて、お前がすっかり俺に頼りきって生活してて、俺がいないと生きていけないような状態になったとする」

(もうなってんだ。今更遅い)

とは言えなかった。

「そこで、俺がお前を捨てたとしたら」

「………」

「ショック?」

「……だろうな。銃が撃てなくなるかもしれねえ」

「他には?」

「声が出なくなるかもしれねえ。目が見えなくなるかもしれねえ。耳が聞こえなくなるかもしれねえ」

「それから?」

「心がなくなるかもな」

「それだけ?」

「………死ぬだろうな」

「そっか、まるっきり他人事みたいだね」

体中に感じていたルパンの温かく大きな掌の存在が、不意に消えた。
ただ、体に触れていた手を離しただけ。
それなのに、壮絶な喪失感が次元を襲った。

(苦しい、ルパンに触れてもらいたい)

自分が男だからとか、彼に自分は不釣合いだとか、散々悩んだ種を放ってでも、彼に抱き締めてもらいたかった。

「なあ、俺がいなくてお前が生きていけるんなら、俺を捨てたっていい。」

「………」

「そりゃあ、こっちだってずっと恋焦がれてた野郎が自分から離れてくのは死ぬほど辛いさ。けど、離せなくなってお前を俺で縛り付けちまうのはもっと辛い」

「ルパ…」

(あ、凄く、息するの、しんどい…)

「行け。ここで逃げなきゃ、本当にお前は一生俺の檻から出られなくなるかもしれねえ」

「あ、」

「けど、自分と俺とは不釣り合いだとか、髭面の自分なんかナイスバディの女には敵わないからとか、そんな下らねえ理由で俺から離れるっつうんなら、その細ぇ首に真っ赤な首輪つけて鎖に繋いで逃げられなくしてやるから」
ルパンに掴まれた腕からじわじわと熱が生まれていくのを、次元ははっきりと感じていた。
これが愛しさだというのならば、もうこの熱を失いたくないと強く願った。

「俺が愛したのは、野郎で髭面で物騒で無愛想で不器用な、次元大介、お前だけなんだから」

ルパンが頬を撫でた。
その瞬間、今の今まで胸につっかえていた痼が取れたような気がした。

(きっと、この大粒の涙はその痼なのだろう)

意識が目の前にいる彼から自分の涙へと変わった時、敏感にそれを察知した彼がカーペットへと次元を押し倒した。

「る、ルパッ……ん!ぅっ、」

次元に考える隙も与えず唇を重ねた。
これで三回目のキスのはずなのに、初めてキスするようなぎこちなさと恥じらいがそこに存在していた。
次元がキスに夢中になっている間に、ルパンは素早くシャツを脱いで次元の腕に巻き、その上からネクタイでそっと縛った。
この天の邪鬼が抵抗できないよう、でも傷付けないよう細心の注意を払った。
縛られたと知った彼は酷く困惑していたものの、ルパンが胸の突起に吸い付いたことにより意識が快楽に染まった。

(何、怖い…)

だが、次元の脳裏にはまた別の恐怖。
それは単純に、

「………震えてんじゃねぇか、無理すんな」

「違っ!……ずっと、焦がれてたお前に抱いてもらえるんだって、」

「それが怖いのか?」

互いの唾液で濡れた次元の唇を、ルパンの細長い指先が拭った。
その感触さえも次元を堪らなくさせて。

「………怖ぇよ…自分を、保てなく なりそうで…」

ふい、と顔を背ける。
嗚呼、この男はその色香を知らないのだ。
何とも思わぬその仕草がどれほどまでに目の前の男を惑わすのか。

「っ次元……悪いが、今の俺にゃあストッパー機能が欠けてんだ」

いつ獰猛な獣になってもおかしくねえんだぞ。
肌蹴たシャツから覗く次元の肌がルパンの唾液で艶めいている。
恐ろしい色香に当てられるルパンは、もう一秒たりとも理性の抑えを保てない。
しかし、

「抑えなくて、  …いいっ」

その抑えは二人にとっては必要が無さそうらしかった。
ルパンは即座に次元が着ていたスーツやらシャツやら下着やらを剥ぎ取った。
服を脱ぐ時間さえも惜しいけど、今はただ、自分達が触れ合うのに邪魔なものを無くしたかった。

「るぱ、るぱん…っ」

その体を惜しげもなく晒した次元が羞恥に赤く染まっていく。
堪らなくなって口付けた。
その間にルパンは自分の服を脱いだ。
性急に脱ぐものだから体が揺れて歯がカチカチとぶつかる。
でも、そんなことどうでもいい。
今はお互いにただ繋がりあいたいだけ。
服を脱ぐ時に生じる布が擦れる音は、次元にとっては恐怖の対象なのだろう。
恐怖といっても、男とのセックスに伴う痛みや不安に対してのものではないようだ。
だとしたら、思い当たる理由は一つだけ。

(彼と繋がり合うことで得られる、恐らく自分の想像を容易く絶するであろう快楽に対してだ)

次元の、目視では確認できない体の震えも、一糸も纏わぬまま肌を重ね合わせているルパンには伝わったらしい。

「怖い?」

「……ああ、すまねえ…」

「いいよ。その震えはちゃんと俺が治してやっから」

そっと、柔らかく笑んだルパンに次元は下腹部がきゅっ、と疼くのを感じた。
その言葉が意図する意味を理解したからだ。
次元の思考を読み取ったようにルパンの手がガンマンのペニスを握った。
もう片方の手で彼の胸の突起を弄る。
勿論、唇への愛撫も忘れない。
息継ぎの為に離したその一瞬に漏れる彼の甘ったるい吐息は、ルパンの理性を削るには十分すぎるほど妖艶だった。「お前は…女とのセックスの時も、こんなにわざとらしい愛撫してんのか?」

不意に上から降ってきた若干不機嫌そうなあの声は、早く繋がりたいのだとしか解釈ができない。

(んなら、そのお誘いに乗ってあげましょ)

ルパンは不敵に笑んだ。

「馬鹿野郎が…こっちが折角お前のためになけなしの理性掻き集めて抱いてやってんのに、それをまんま無碍にしちまいやがる」

「そーゆーの、お節介って言うんだよ。知ってたか?」

(馬鹿くせぇ、)

早く、あの大泥棒をこの体に受け入れたいのだと。
体が彼を深く、痛いほど強く欲しているのだと。
どうやったらお前に伝わる なんて、馬鹿げたことだ。
いつもよりも華奢に見える相棒の体を、ルパンはそれでもゆっくりと愛撫した。
もう少しだけ、あと数秒でもいいから、生娘らしい彼を堪能したかった。
一度自分の物にしてしまえば、もう処女には戻れないから。
ゆっくりと次元のペニスを愛撫していくうちにトロトロと溢れ出してくる先走りの液体を、後孔へと塗りつける。
そこを撫でていくと、稀にくぷりと指先が中へ侵入する。
次元のそこは知らず知らずに収縮を繰り返した。
ルパンは早くそこに入り込みたい衝動を堪えることに精一杯。

「指、欲しい?」

「へっ…欲しいのは、お前の方だろうが…」

本当は甘えたいのに、意地っ張りな自分が顔を出す。
憎たらしいと次元は思った。
でも、ルパンはそんな次元の思いをちゃんと理解してくれたようで。

「正解。でも………そのうち欲しがらせてみせるさ、」

くぷ、

「っあああ!」

舌舐めずりしたルパンにぞくりと背筋が張った時、彼の細長く綺麗な指が内部へ挿入された。
一瞬にして体に力が入る。
でも、不思議と痛みはなかった。
ルパンや五右ェ門や不二子や銭形や、色んな人間と出会って時間を共有していく中で、まさか男である自分が体内(正確に言えば直腸だが)に異物が入ってくるなんて、誰が想像できただろうか。
そりゃあ、知識がないことはなかった。
ただ、ただ、愛しい人間に内部を掻き乱されるのは、これほどまでに深い快楽なのか。
気付けば、今は赤くない筋肉質な背中にしがみついていた。

「く、ふ…んぁ、はっ…… ぃあ」

先程まで一点しか刺激がなかったのに、ふと気が付けば三点を優しく撫でられる感覚。

(ああ、そんな軟な刺激が欲しいんじゃねえ。)

もっと、髪を振り乱すほどの快楽が欲しい。
次元は今一度、傷を付けるのに随分と躊躇しそうなほど滑らかな背中に爪を立てた。

「って!」

「おい、…お前、それで満足か?」

「……は?」

「俺を大事にしてえんなら!さっさと、しろバカ! …… その後なら、いくら、でも 優しくさせて、やらぁ…」

誘い文句にしてはあまりにも色気がなかった。
しかし、焼き切れる寸前だったルパンの理性は容易く切れた。

「は!言ってくれちゃってんの… ほんじゃま、いただきますかね?」

くぽっ、なんて耳を塞ぎたくなる卑猥な水音を立ててルパンの指が次元の体内から出でいく。

(淋しいなんて、ちっとも思ってない)

(俺は、少し淋しいよ。処女のお前はホント、からかい甲斐があったから)

(黙れよ。第一、俺は女じゃねえ)

(ほら、そーやってちゃんと俺の言葉に反応してくれる。……変わらないで、次元、お前だけは)

(……… くれよ)

(ん)

今の二人に、言葉はただ邪魔なだけだった。
愛してる≠フ代わりに口付けた。
そして、次元の秘部にもルパンの亀頭が口付ける感覚。
次元が目を閉じた。

「っくう!ふあぁ うあ!」

熱い。
火傷するほど、熱い。
ルパンが自分の中に侵入してきた瞬間に覚えた感覚だった。

「あっ、つ…」

「うぁ……、っふあぁ」

その熱が下腹部から腹部にまで登り詰めてくる。
それが外部からの刺激ではなく、内部からの刺激ときたものだから、次元は一層喘いだ。
まるでルパンに体を焼かれるよう。
いや、もうずっと前から心は焦がされていた。
今は彼が体まで焦がしてくれる。
その喜びは、涙が自ずと溢れてしまうほど。

「いいよ、泣くななんて言わねぇ。きっと、その理由は俺にとってすっごく嬉しいだろうから…」

ぴたりと、ルパンの体と次元の体が重なった。
脈打つルパンのペニスの存在は、次元の中で顕著に主張している。

「お前も、嬉しいのか?」

「に決まってんじゃん…じゃなきゃ、」

セックスにおいては(正確に言えば、快楽によって相手を支配し悦ばせる腕にかけては)自分の右に出る者はいないと自負している自分が、こんなにもたった一人の人間に溺れる訳がない。

「次元ちゃんのナカ、あったかい…それに、すごく居心地がいい。ずっとこうしていたい」

未だに小刻みに震える次元の腰を、労わるようにそっと撫でる。

「へっ、玄関先で、随分と色気の…ねえこった」

薄く笑った際に細められた瞳から、膜を張っていた雫が零れた。
いいよ、意地っ張りなお前のことだ。
きっと、不安で不安で仕方がないんだろう。
いつ、俺たちの関係に終止符が打たれたって、何も不思議はねえんだもんな。
でもさ、その不安って、裏を返せば俺と離れたくないって証拠なんだ。
こんなにも嬉しいことってあるかよ。

「わり、も…抑え利かねえや…」

「え、ルパ…あ!っく…んん、 っはぁ…っ!」

前置きの一つもなく、ルパンが体内で暴れ始める。
多少は擦れて痛みは生じる。
だが、そこから生まれる摩擦熱が次元の体を、少しずつではあるが確実にルパンを植え付けていく。

「く、はっ…ぁう!」


ただ己の欲のなすままに腰を叩き付け、高く喘ぐ。
無意識に掴まれた二の腕に立てられる彼の爪を、振り乱される前髪を、心から愛おしいと思う。
次元は酷く恥ずかしそうに顔を逸らすが、それすらもルパンの官能を煽いだ。
背面からの挿入でなくてよかった。
でなければ、この天の邪鬼が可愛らしい顔を隠してしまうから。

「野郎の喘ぐ顔を見たいなんざ…ぁぅ、余程の…酔狂な奴もいたもんだ…」

「そーゆー次元ちゃんだって、俺のこと離したくないみたいよ?」

「っ!」

こんなに締め付けてくれちゃって。

(ああ、今なら、恥ずかしさで死ねるんじゃねえかな…)

そりゃあそうだろう。
次元にもそのモノの形がありありと分かるということは、それは相当な締め付けなんだろうから。
ルパンの、ポーカーフェイスを装っているつもりなのだろうが、迫り来る快楽に顔を歪ませている様から分かる。
ついでに言うなら、ルパンが腰を引く度に彼に絡み付く自分の内部も、分かってしまう。(仕方ねえだろ!ずっと惚れてた奴に抱かれてんだ!)

今でも、この快楽が夢なんじゃないかと思ってしまうほど。

夢じゃないよな?
夢じゃないなら、俺の名前を呼んでよ、ルパン。

「だいすけ」

「、っ」

この幸せが、夢なんじゃないかと思ってしまうほど。

「まだ怖いか?大介」

「怖ぇよ、ルパン…」

「………」

「…… 幸せすぎて、怖いんだ…」

「大介、」

「朝起きたら!隣にお前がいなくて、朝、珈琲入れるのも習慣じゃなくなって!」

そんな日が来たらきっと、自分は壊れる。
ああ、こんなにも自分は、世界一の大泥棒を愛してしまったのだ。

「砂糖は一杯でミルクはなしとか、お前が言って…俺が間違ってブラック出したからって、喧嘩して…そんな、のが……ゆめ、だった、ら ……ああぅ!!」

「大介、お前の大事な処女を貰っておきながらベッドじゃなくてこんな所でセックスしちまったことは謝る。けど、これだけは信じろ。」

中に埋まったルパンのペニスが、より一層奥へと入り込んできた。
次元の背が繊に撓る。

「一度手にした宝には何の興味もない。盗む過程が面白いからだ」

じくじくと、涙が散々伝った頬と、ルパンと繋がっている箇所が痛む。

「ただ、イレギュラーなことだが稀に、盗んだ後もずっと手離したくないものも存在することに気付いた。」

「それ、って」

「嗚呼、お前だよ、大介。次元大介、お前だけだ。何回も言わすな。女々しいって言うぞ」

「もう、言ってる…」

また頬が焼けるように痛んだ。
相棒としての生活があまりにも長すぎて、それが崩れることに不安を感じていた。

「うぅ…ふぇ、」

「泣き止めバカ!こっちはエライ爆弾抱えてんだぞ!」

「おま、この期に及んで下ネタかよ馬鹿野郎!いい加減に、っひゃう!」

「ちぃっと黙っといて…今まで俺がどんだけお前さんを壊さねえように我慢してたか、教えてやっから…」

「ちょ、ッ待…「腰、壊しちまったらごめんな?」

視界がブレる。
涙のせいもあるが、これは絶対にルパンのせいだ。
ベッドで致していればシーツでも握ればいいのだが、今は生憎そんな物はない。
なら、

「いでぇ!」

「ふぁ!、んくぅ…ふうぅッ!」

ルパンの露になった白い首筋に、力一杯噛みついてやった。
そうすることで、痛みから。
いや、本当のことを言えば、気が狂いそうなほどの快楽が少しだけ和らいだ。

「……いいさ、好きなだけ噛め」

「くふ、んんっ」

次元の口内に微量に広がる鉄臭い液体。
傷付けて悪いとは思わない。

(だって、こっちだってしんどいんだよ!)

世界を簡単に納めてしまうルパンの大きな掌が腰を撫でる。
自分じゃあ分からないけど、そうされることで体の震えが伝わる。
噛む力が緩んだ。

「俺のためにやたらと我慢してくれる次元ちゃんって大好き」

「く、そっ……他人事だと思っ て、」

「でもね、その所為でお前が辛い思いすんのすんげー嫌なんだわ。だから、」

今の俺の幸せをおすそわけ。
節榑立った指先に顎をすくわれ、口付けられる。
吐き気がするくらい甘くて優しい口付けだった。
ああ、人間の体は外部からの刺激に本当に素直にできている。
下肢からの刺激が、痛みではなく快楽に変わった。
と同時に、今力の限り自分を乱していく大泥棒に対する愛しさが底無し沼のように湧き出してきた。

「っ!大介、どったの?」

ルパンのすっとんきょうな声。
そりゃあそうだろう。
あの意地っ張りで天の邪鬼の次元が彼に甘えるようにすり寄ったのだから。

「おい、次げ「ど、しよ……好き、すっげぇ好き…好き好き、 ルパンッ!」

ロートーンの次元の声が少し高くなる。
全くに持って耳の毒だとルパンは感じた。
耳を犯す声も、目を犯す扇情的な体も表情も、それら総てが自分の五感を鈍らせていく。
特に酷いのは触覚だ。

頬にかかる熱くも甘い吐息。

じっとりと汗ばむ背中。

その人と触れ合っている箇所。

その人の内部にその人が存在すると言う事実。

その感覚はあまりにも不変的なものに思えた。
不変的なものと言えば、

「な、るぱん……言、って 」

二人の間に存在する

「 …愛してるよ、大介」

愛だとか。

「……。  り、がと…ルパン」

今まで見たどの涙よりも、綺麗だと思った。

「泣くのは構わねぇが、それの理由は嬉しい時と俺とのセックスの時だけな」

「………ばか、ッヤロ」

ふい、と視線を反らす次元を少し気に喰わなく思い、少し強く、腰を奥に送り込んだ。
余計に内部に存在するルパンの鼓動を深く感じて、次元は背を仰け反らせる。

「あ、あっ!くぅ……ルパ、ン、」

未だに身悶える次元の細い体を膝の上に乗せ、次はゆるゆると腰を動かし始めた。
緩やかなその動きに、次元はまた別の熱が生まれる。
それは恐らく愛おしい、という意味だろう。

「ルパン……好、き」

汗のせいで前髪がへばり付いた額を、そっとくっ付け合う。
そこすらもうっすらと脈を打っているようで、堪らなくなる。

「ああ、俺もだ… 大介」

じわりと奥に広がる、マグマ。
今度は完全に彼の身を焦がしたようだ。
でも、それは酷く気持ちのよいものだと次元は感じた。

「あ、つい…」

「っ、はぁ… 大介のナカも、随分あったかいぜ?」

「 言うな、ばかやろっ……!」

ルパンが手を取って自分の腹を触らせ、そこがぬるりと濡れていることから、次元はようやく自分が射精していることに気付いた。
これほどまでに、愛する人と交わることは我を忘れるほどのものなのか。
次元はふわふわと意識がさ迷う感覚を覚え始めた。

「もっかいする?…… するなら、カーペットはご入り用?」

くすりと笑ったルパンに、もう二度と戻ることはできないと次元は確信した。
でも、それでも、後悔はしないと。
これも確信した。

「――…ベッドが、いい っ」



――…

あれから、カーテンの閉まってない月明かりだけが絨毯やらベッドやらを照らしている部屋で、初めてだと言うのに幾度となく体を求められた。
そのままお互い、泥のように深く眠った。
本当によく眠っていたようだ。
開けっぱなしのカーテンの間を縫って差し込む日光の角度が部屋を強く照らし始めた時間帯だった。

「おはよう、大介」

「ん、 はよ…」

目を冷ました時にはじめに次元の目に飛び込んできたのは、少し眠たげな、微笑を浮かべた自分の恋人。
しかも目の先に、だ。
そりゃあ顔くらい火照るさ。

「かっわいー、大介」

余計なお世話だと言わざるを得ない発言の後、唇にそっと触れた、唇が。
こんなにも心があたたかく感じる朝ははじめてだ。
そう思ったのは、自分だけじゃないはずだ。
あ、そうだ。

「すまねぇ…今日は珈琲、淹れてやれねぇ、」

少しの懺悔の気持ちでそう言ったのに。
ルパンがふ、と笑って。

「今度は俺が、毎朝珈琲淹れてやっから」

(馬鹿野郎…)



-fin-






―――――――――――

小林清人さんから頂きました…!
…つ!…!!!!
大 介 … !
手が震えるよ…!切ない空気からこんな甘さがたまらない…!清人さんの丁寧できらきでしっとりらな文章が素敵過ぎて…
一文一文から滲み出る空気が物語を作り上げる感じがどうしようもなく素敵。
ありがとうございます!!!


お持ち帰り厳禁。



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