不器用





(目、唇、鼻先、指、腰…吐息…?)
例によって不二子がまたルパンへ、今回は厄介な骨董品の盗みを依頼している。ルパンの太股へ体重の軽いであろう不二子が乗り、首に腕を回す。露出度の高い服で胸元を強調すれば、ルパンはだらし無く鼻の舌を伸ばした。俺は扉の横っちょで二人を呆れて眺めていた。あれが女の特権ってやつか。うふんだとかあはんだとか女特有の色気ある声でルパンを誘惑すれば、たちまち堪らずにルパンは襲い掛かる。それを不二子が阻止するのもまた日常茶飯事だ。そろそろ終わる頃か。最後にキスを投げて、不二子はルンルンと上機嫌で部屋を出て行った。
「俺ァ下りる」
「やだやだぁ!次元ちゃんが頼りなのに〜!」
勝手に言ってろバカタレ。

結局、嫌々手伝うことになり、苦労して手に入れた骨董品は案の定不二子に横取りされることになった。

それが一ヶ月程前。またしても不二子が顔を出してみれば、堂々とルパンの横を陣取り、あれが欲しいだこれが欲しいだと強請る。「不二子ちゃんの欲しい物は俺様なんでも盗んじゃうよ」だってよ。まったく懲りねぇな。それにだ、ルパンの真横って言うのは俺の特等席なわけであって不二子が我が物顔で居座ること自体が気に食わねえ。
(どうにかしてあの位置を奪い返せねぇかな…)
(欲しいモンねェ…物欲がないわけでもねぇが…)
あんなにも大胆にルパンに近寄っては、わがままが言える不二子が羨ましくないと言えば嘘になる。
(不二子のみたいに腰くねらせてねだってみるか?いや待て恥ずかし過ぎるだろ俺いくつよ)
「…コレだ」
ふと、目線は広げた新聞の一面を飾るある物に目が行った。欲しいというわけではないが、これならルパンも興味が沸くだろう。俺は夜を待つことにした。




「次元ちゃんどったの?」
あっという間に夜。食後、ルパンはソファーでまったりくつろぐ。その横をムードもなくドカリと座る。大丈夫だ、これなら自然だろ。俺らしいだろ。
(あー、と…まずは手を…)
不二子はまず自然に手の甲を触っていた。しっかりとこの目で見てる。俺もそおっと手を寄せて、甲に触れる。ちらっと盗み見れば、素っ頓狂な顔をするルパン。頭にはクエスチョンマーク。
(うわ、うわ、うわ!恥ずかしい!見るな!見るなっ!いや見ろ!)
更に片手でルパンの太股でぎこちなく手を滑らせて、身長が1cmしか違わねぇから上目遣いは出来ないけど、徐々に擦り寄ってみる。胸元を強調できる豊かなおっぱいは持ち合わしちゃあいないが、ボタンを二、三外したワイシャツで露出を主張する。それでもって、色仕掛けの吐息だっけか?…を、俺なりに。そしてさりげなく机に置きっぱなしの新聞を差し出す。
「…なあルパン。折り入って頼みがあるんだが、これ欲しい」
「あんりまぁ?次元ちゃんがおねだりするなんて珍しいじゃないの?どれどれ見してみ?」
ルパンが手に取るそれは、近々美術館で展示される時価にして数百万程度のスノーリングと呼ばれる白いダイヤだけで作られた指輪。ふむふむ、とルパンは眉のシワを作る。
「盗んでくれよ…」
順調、順調。後はルパンがその気になってくれればこっちのもん。不二子が喜んで、勢いで抱き着いたらルパンのヤツ、いやらしい顔してたからな、俺にだって出来るさ。不二子だけがルパンを誘惑できるってわけじゃねぇんだ。ふふんだ。
「ん〜、次元ちゃん?ちょおっっとお尋ねしたいんだっけども?」
「ゃ、……ッ、なんだ…?」
(腰に!手を!添えるなっ!)
「これって自分用?それともカワイコちゃんにプレゼントするの?」
「…あ。いや…、女にだ」
「ふ〜ん?あらそう」
咄嗟に嘘をついた。待て、というか、なんだその反応は。不二子には即答で、俺は考え込むのか。色仕掛けが足りないとでも?これ以上どうしろと?わからねえ。ルパンは新聞を夢中で目を通してはいるが、器用なことに手つきはだんだんと変なところを触ってくる。不二子って、こんなのに良く我慢してるな。
(もう一押ししなきゃ駄目なのか?あー、不二子のヤツどうやってルパンを誘い込んでんだよ!ムカつく女だぜまったく!)
「次元ちゃん!ん〜〜ッ」
何だか機嫌を良くしたルパンにキスを貰ったけど、これをルパンが不二子に毎回のようにキスしてるんだと思うと、不満。やたらニコニコするルパンに、尻を撫で回されてもう、俺、嬉しいのやら悲しいのやら。
「ん…、ふッ、…ル、パン?」
「次元ちゃんにもいっこ質問、いっかな?」
「うん?」
「不二子ちゃんの真似っこにしちゃあ、ちと子供っぽいかなぁ」

え?
あれ?
…バレ、てる…?
「…―――ッッ!?」
「ぬふふふふ!俺様が気付かないわけないでしょーが。今朝からもう次元ちゃんの視線で俺様の息子が起っきしたいってさ?」
ぶわぁっと身体中が熱を出した。たぶん、顔、真っ赤。超恥ずかしい超離れてええぇぇ!!
「いい?不二子ちゃんのね、おねだりって言うのはね、順番があんの。今頃は俺様のほっぺにキスしてるよ?次元ちゃんは見よう見真似なんだろうけどね。あと、おねだり不二子ちゃんにチューはしないよ?ビンタされちゃうもの。次元ちゃんさっき不機嫌そうだったもんな、かあいいなぁ」
そんでもっかいルパンからデコにチュウを貰った。一気に色んなこと言われて何がなんだか。
「あ、…うわぁあぁあっ!!近寄んなぁああ!!!」
「何よもお!!次元ちゃんから誘って来たんでしょお!?暴れちゃやあよ!!」
ガッチリとルパンに捕まって、逃げられなくなった。視線がぐるんとひっくり返ったと思ったら、ソファーに寝かされて、ぼやぼやと天井とルパンが見えて、頬に涙が一粒、零れた。
「すっごく色気あったよ。ほら見て?勃っちまった」
「う、ん…」
「不二子ちゃんのは後回しだ。スノーリング、お前の為だけに盗んでやるよ」
「うん…お願い…」
何だか気疲れした。ルパンが「じゃあ、仕事前にコレ、なんとかしていい?」って申し訳ないように言うから俺は素直に腕を回した。ぎゅって抱いた。いらないなんて嘘。はやく欲しい。俺の為に盗んできて欲しい。












―――――――――――

六ノ助さんからいただきました!「不二子ちゃんのマネをしてルパンを誘うけど結果してやられる次元(…曖昧)」
うああああああああ
次元可愛すぎる可愛すぎる…!なんなの、六さん宅はSSメインなのにこんな、素敵…っ!
上手なルパンかっこいいよう(泣)好き好き大好き
ありがとうございました…っ!


持ち帰り厳禁。



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