※5のサブストーリーネタ
→元上司の金貸し回後だと思ってください。
やってない方でもわかるように書いていますが、ネタバレになるので閲覧は自己判断でよろしくお願い致します。
****************
いつものように某金貸屋の事務所へ遊びに行くと、明らかに元気のない秋山さんがソファに座っていた。
「名前ちゃーーーーん!!!!」
私が入って来たのを見て、数拍遅れて起立すると、私の名前を呼びながら駆け寄って来てそのまま抱きついた。
いや、なんなの。33歳の無精髭を蓄えた可愛くないお兄さんに抱きつかれても不愉快なだけだが。
「はいはい、どうしたのどうしたの。」
普段の私であれば"暑いな鬱陶しい!!セクハラで訴えるぞ!!"などと言いながら回し蹴りをお見舞いしてやるところなのだけれど、目の前の33歳は傷心中。そんなことを言った暁には、余計面倒くさい事になるのは火を見るよりも明らかだった。
一度それで散々な目にあった前科もあるので、学習能力の高い私名前は、どうどうと落ち着かせながら秋山さんを元居たソファへ連れて行き、私も対面へと座ったのだった。
「それで今回はどうしたんですか?」
話を聞かない事にはなにも始まらない。下手すると地雷を踏み抜いて余計厄介な事になりかねない為、とっとと本題へ入るよう促した。
「実はね…この前元カノの旦那が金を借りに来たんだけど…」
メソメソと女々しく話し始めた秋山さんのわかりにくい説明をまとめるとこういう事だった。
銀行員時代に付き合っていた彼女の旦那。つまり不祥事の擦りつけで解雇された時点で秋山さんと別れ、その後秋山さんの上司と結婚した彼女の旦那が金を借りに来た。はじめは、いつもの無茶振り要求竹取物語システムで"奥さんと別れろ"と、言おうとしていたのだが、彼の振る舞いを見ていたらそんな事を言う気になれず、秋山さんと和解する事を条件に金を貸す事になった。
だが、周知の事実である元カノ引きずってます男な秋山さんは、あの場では格好を付けたが元カノと彼を応援するような形になった事が全て受け入れられたわけではなく、現在傷心中である。と。
そういう事であった。
「なるほど状況はわかった。前から思ってたけどさ、秋山さんってちっせぇよね」
「えっ」
慰めてもらえるものと勘違いしていた目の前の男、秋山駿33歳は、私の突然の暴言により困惑した顔をしている。
この私が甘やかしてやるわけねぇだろうが。
「あのさぁ、男は過去の女を保存フォルダに入れっぱなしにするとか言うけどさ、あんたのは保存どころか鍵付きフォルダに入ってるよね??もう元カノは上書きどころか別れた時点でゴミ箱にすら残してないんだよ。」
まともな神経をした女は元彼の上司。しかも、元彼が大学時代から世話になっている繋がりの深い上司には乗り換えない。
言っちゃ悪いけど安パイ狙いとしか考えられない。
「それをねちねちねちねちぴぇんぴぇんして女々しすぎるわ!!!!メンヘラJKですらとっくに切り替えて黒アイコンから新彼とのピースアイコンに変わってるわ!!!」
「ごめ…それはなに言ってるかわからないかな。」
「おじさんだもんね!!!だからとっとと忘れろって言ってんの!!!」
あんなにも甲斐甲斐しく世話を焼いている花ちゃんを見ず、他にも秋山さんが好きだとアタックして来た女の子達も見ず、ずっと過去の女に縛られてる見た目だけチャラい33歳とかもう詐欺だろ。
腹が立っても仕方がない。
「それが出来ないから困ってるんでしょ」
「忘れなかったらいつか元カノが帰ってくるとでも思ってんの??残念ながらそれは金に目がくらんであんたの好意に漬け込みに来ただけだからな?!?秋山さんがそれで良いなら良いけど、その可能性すら自分で絶った癖に何悩む必要があんの??」
「うぅ…だから気持ちの整理の仕方が知りたいんだってば…」
私の怒号と暴言でけちょんけちょんにされた秋山さんは、もうボロボロである。ちょっと涙目になってんなこいつ。
日頃より身の回りの整理整頓ができないこの男に、心の整理整頓が出来るわけ無かったか…。と、今度は私が頭を抱える羽目になった。
「そこら辺の子と一回遊んできたら??それか言い寄って来た子と付き合ってみるとかしたら良いんじゃない?」
相手からしたらとんだ事故物件を押し付けられたようなもので、大変申し訳ないのだけれど、1人挟んだらもう事故物件の明記しなくて良いからさ!!物件自体は悪くないと思うよ!!知らんけど!!
「じゃあ名前ちゃん付き合ってよ!」
「あ゛?????」
悲痛とも取れる秋山さんの叫び声に、反射的にメンチを切ってしまった。
それこそなんでやねんだわ。私に事故物件を押し付けるな。
「ごめんなさい」
同じく反射的に謝ってしまった秋山さんは、酷く悲しそうな顔をしていた。
その後、明らかにしょぼくれた秋山さんは、自身の経営しているキャバクラでオーナー権限を使い、キャストちゃん達に慰めてもらったのだった。
ほんとどこまでも秋山駿だないい加減にしてほしい。