「ばびゅーーん!なまえおはよう!」
変な効果音と共に今日もやってきた、にっこりと微笑む自称宇宙人の電波野郎。白に近いプラチナブロンドの髪に薄紫色の瞳。
学校指定の空色のブレザーの中には華やかなピンクがちらついている。
電波野郎は奇抜なファッションを好むらしい。あたしのような凡人には理解できない。したくもないけど。という電波宇宙人が最近あたしの回りを彷徨いている。

なぜかというと、遡ること一週間前。
いつものように自宅から徒歩で20分ほどの学校へ向かっていた途中、10メートルくらい先にこの目立つプラチナブロンドが倒れていたのだ。自分にしては珍しく親切心が働き、つい声をかけてしまった。

「僕、宇宙人です。お、お腹 すいたよ」
若干片言なしゃべり方が印象的だった。

「え?お腹すいたの?」

「う〜」
なんとも形容しがたい言葉を発しているのをほっておくわけにもいかず、とりあえず近所のファミレスにでも連れていこう。

***
「おいしい!おいしいよ!」

「それは良かったね」
顔に似合わずガツガツとカレーライスを平らげていく。
「これ何て食べ物」

「カレーライスだけど…」

「かれーらいす!」
フンフン〜と鼻歌を歌いながらご馳走さまと両手を合わせた自称宇宙人。カレー知らないって嘘だよね?

「ありがとう!元気でた!」

「そう」

「僕ハル!君のお名前は?」
名前?見ず知らずの電波さんに名乗っていいものなのか。

「…なまえだけど」
聞こえるかどうかの音量で喋る。

「なまえー!」

「はい」

「僕と友達になってなまえ!」

「…はい?」




あれからだ。あの出来事からほぼ毎日この自称宇宙人とは顔をあわす。江ノ島のよく晴れた空にこのプラチナブロンドの髪がよく映える。ふわふわした髪を撫で回したくなってしまう。

「ねーなまえ。つり楽しいよー」
今日も顔いっぱいにキラキラした笑みを貼り付けてあたしの隣を歩く。

「そう」

「なまえもやってみようよ!つりー!」

「あたしはいいよ。生きてる魚嫌いだし」

「あー嫌いって言った!駄目だよ。ケイトに怒られるよ!」
ケイトって誰だよと思ったけど口には出さない。この自称宇宙人のハルくんはあまり言葉のキャッチボールが上手ではないらしい。たまに何を言ってるのかわからない。

「ばいばーい」
いつのまにかあたしの通う女子高の前にやってきた。自称宇宙人とはいつもここでお別れ。この一週間ずっとそうだ。きっと明日も明後日もそのさきもこんな朝の通学が続くんだろう。うるさい朝は嫌いだけど、この電波とすごす朝は悪くないかなーと思った。



20120428



#novel数字_戻#
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -