「…ん、」


いきなりだ。本当にいきなりだ。今、わたしは目の前にいる綺麗な顔を眺めている。近い。めちゃくちゃ近い。顔がくっつきそうだ。いや、現に唇どうしはくっついている。

「…目くらい閉じなよ」
ゆっくり放された唇。
「はあ!」
止めていた息を再開する。やっぱり空気は大切だね。「な、ななんですか!いきなり!」

「なにってきすした」

「どうして!」

「したかったからだよ」
少しムッと不機嫌になった少尉。何がいけないんだと言わんばかりだ。

「別にいいでしょ。減るもんじゃないし」
減ります!確実にわたしの寿命がすり減ってます。なんてことは口にできない。何故なら本当に寿命が減るか実験しそうだからだ。

「すとっぷ!」
またしてもずいずい近づいてくる少尉をすんでのところで止める。
「…なんで」
あ、怒りそう。やばい。
「わたし今資料まとめてるんです!忙しいんです!」
「そんなの後でいいよ。上司命令」
有無をいわせない。ひどい。そんな顔されたら逆らえませんよ。
「…なまえ」

「うわわわああ。耳元で喋らないでくださいよ!くすぐったい!」

「なまえ、ちょっと黙ってよ。うるさい」

「ふっ、」

ぱくっと食べられてしまうような、だんだん深くなる。少尉のしたがわたしの中をなめ回す。

「んふ、…はぁ」

「なまえ」

息をする暇さえ与えないような口付けに頭がくらくらしてきた。



「…ちょっとなまえちゃん、このしりょう、」
バサバサー

「ロ、ローワンさん!」

「あー、ごめん」
扉を開けて入ってきたのはわたしの上官のローワンさんだ。私たちをみて固まっている。
「ちょっと、ローワン!勝手に入ってこないでよ」
勝手はどっちだ。今日は資料をまとめるためこの資料室を一日貸しきりにしてもらったのだ。それなのにいきなりやってきな少尉のせいで貸しきりになっていない。

「しょ、少尉は出ていってください!自分のお仕事は大丈夫なんですか」

「うん大丈夫」
…嘘だ。




20120319



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