2nd staiton

なまえは図書館に来ていたよく通う見知った野原を抜け、左右に開閉する自動ドアをくぐる


受け付けの前には数人の列。なまえはそれの最後尾





手元に3冊の本
恩田陸の蒲公英草子 光の帝国
夏目漱石のこころ


恩田陸の2冊は好きで読むために、こころは現代文の授業でテストに出題されるから借りたのだ


漸く順番がきて、手際よく受け付けが返却へ







(せっかく図書館に来たから何か借りようかな…)



新作棚を一周し、特に読みたいものも無さそうだから古書のコーナーに足を進めた




奥に足を進めていくと、ふいに何かが目の端に止まった



(扉だ…)


そこには強い存在感を持つ古い扉。その周りにだけは誰も人がいない

必ずそこにあるのに誰の目にも留まらない扉



はて、こんな目立つ扉はあったっけと思いドアのぶに右手を掛けた



重々しく軋む扉を力一杯押す


薄暗い室内

ほのかにインクと新しい紙独特の匂い



眼下に広がる無数の本、本本本本本………



そして






なんともいえない魅惑がこの場所に広がっている



「え、え。なにこれ。ここどこ、図書館の一部?
は、こんなところあったの」



あまりの驚きについ独り言が増える






「シビレるだろう?」




なまえにかけられたと思う低いがよく通る声
いきなり発せられた声に肩が震えた


(さっきまで誰もいなかったのに)




不思議な髪の色をした青年。遠くからでもわかるよく整った顔


緩いシャツにデニム
図書館のエプロンをし、首からはネームプレートが下がっていた



「いらっしゃいませ。」


と小首を傾げて小さく笑う


行きなり現れた青年に私が警戒していると



「怖がらないで
ここはそらの孔分室。私はここで司書を務めている眞悧と申します。」


ゆったりと丁寧に語った司書さん




「ここ、ホントに中央図書館の分室なんですか?全然人がいないみたいだけど…」



「分室ですよ。ちゃんと運営もしています」


人当たりのいい笑顔

だが何か胡散臭く感じる


「とは言え、お客様がいらしたのは随分久しぶりです」

「ここは特別な人しか入ることができない図書館。
しかも、あなたはイレギュラーなお客様だ」


ゆっくりと綺麗な口から零れる言葉




「…(会員制か何かなのかな)よくわからないけど少しここを探検してもいいですか?」



「えぇ、どうぞ。」

なんとも可愛らしいお嬢さんだ、適応力が高いというか…
眞悧はクスと笑って了承した





「君の名前を教えてくれないかい?」

静かな分室に響く声


「なまえ…です」


「なまえちゃんは運命を信じるかい?」


「運命ですか、
テストの山が当たったときは運命と神様に感謝しましたけど」


「はは、それは君の実力じゃあないのかい。」


口角を上げ綺麗な笑顔を作る

「なまえちゃんは人の運命に干渉することが出来るんだよ」


意味ありげな言葉に気持ちが曇る


「干渉?」


「そう、だからイレギュラーな存在。そのうちわかるよ」


今度は真顔で語り、恐怖心を煽られる





そんな怖い顔しないで可愛らしい顔が台無しだよ、と今度は優しく微笑む


「司書さん、なんか怖い人ですね」


「眞悧でいいよ。」

優しくしてるつもりなんだけどなあ、小首を傾げて私の目を覗きこんできた




「なまえちゃん。これからもう1人お客様が来ると思うんだ。気をつけてね」


最後に音符でも付きそうな言い方である



「はい…」

いったい何に気を付けるのか語らない眞悧














運命が動き出すときを静かに待っていた





おわり
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