fine weather


「今日も日本は平和だなあ」
屋上の柵に駆け寄り彼女は雲のかかった空を見上げた。さらりと風に揺れてる髪から緩んだ顔が見える。
「えらーいひとが日本さんは戦争しないよっていう約束したからね。にほんばんざい」
「あぁそんなこともあったね」
どうでもよさそうな言葉とともになまえはこちらをあおぎみた。首痛くならないのかな。
「うん。なまえと違ってしっかりしてる。素晴らしいね」
「あわあっ!美少女発見!」
「ちょっと、人の話きいてます?」
俺のことを見ていた瞳はすぐに違うものをうつす。
もう、俺との会話なんてどうでもよくなってしまったのかもしれない。なんとも気が変わりやすい。そんな彼女はまるで猫のようだ。
「かっわいいなああああ眼福はあはあ」
「ちょっと鼻息あらくしいでよ。そして近づかないでよ。知り合いだとおもわてちゃうでしょ」
「ちょ、ちょ知り合いでしょ!わたしは君の可愛い彼女でしょ」
「すみません。やめてもらっていいですか。うち、ゆうた的に駄目なんでそういうの」
君の気を引くにはこんな風にざれごとを言うしか俺にはできない。君が可愛い女の子じゃなくて男の事を少しでも気にしたら俺は気が狂ってしまうのだろうか。
「哀れみの瞳でこっちをみないでええぇ。つか、ゆうた的ってなんすか。新たなゆうたのゆうたによるゆうたの決まりか何かですか。情報早すぎてついていけないわ。これが格差社会か。くっ」
「くっじゃないよ。なに崩れ落ちてるの。てかなまえゆうたゆうた言い過ぎ」
「そこですか。突っ込むところはそこなんですかゆうきさん」
「・・・」
今だってほら実の兄に嫉妬している。彼女のことを信じていないわけではないのに。
「ゆーきくん」
「はい、なんですか」
「わたしくらいなんだからね。ゆうきのことをこんなに好きなのは。だから心配しないでよ。変な顔になってるよ」
「・・・変な顔って」
「そう!笑って笑って!わたしはイケメン大好きなんだから」
彼女の一言は俺にとてつもない回復効果を与えるらしい。黒く渦巻いていたこの気持ちが晴れてゆく。
「よーし。さぼり終了。教室戻ろう!」
背伸びをした彼女のうしろにはすっかり雲の消えた空が輝いていた。

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