He knows what to say.


祐希はいつもぼんやりしている。

「ゆーきくん。お茶溢しますよー」
「…おっとっと、危ない危ない」
今だってほら、あたしが言わなかったら右手に収められている湯飲みからそれはそれは忠実に重力に従って美味しいお茶がコタツの上にばら撒かれてしまうところだったのだ。

「もう、今日はいつにもましてぼーっとしてるね。なにかあったの」
「ううん。特に何もありませんよ。ぼーっとするのもいいかな、って思ってさ」
「…ふぅん」
そう言うとコタツの中心にあるみかんに手を伸ばした。するするとみかんの皮は祐希の手によって剥ぎ取られ美味しそうな形に。

「このみかん甘いよね」
「ふふん。うちのおばさんちのだからね」
「あぁどうりで、ここ最近みかんが急増したなと」
「お裾分けでーす」
「いつもどーもでーす」
みかんを食べ終えた祐希はまたへにゃりとなった。
「ちょっとお茶溢すってば」
「あらあら。湯のみさん頑張って」
「あんたがぼーっとしなければいいだけのはなしでしょう」
「うーん。それは駄目だね。今日はぼーっとするって決めたから」
「…」
「こんな日もたまにはいいんじゃないのかななまえさん」
「祐希の場合は大半がぼーっとじゃない」
「そうかな」
「そうだよ」

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