香ばしい匂いに起こされて


目が覚めると窓の外はだいぶ明るくなっていた。そのままの体勢で目だけを動かす。キョロキョロ。

「ゆーたー」

やっと起きたね、と完全に開け放たれている扉の向こうから声が聞こえた。
香ばしいパンの匂い。コーヒーを落とすコポコポという音。ふふふん。最近買ったあのコーヒーメーカーはなかなかにやりおるな。よし、起きよう。

「おっこらしょ」
「…おじさんじゃないんだから」

いつの間にかやってきていた悠太があきれたように言った。

「おじさんじゃなくておばさんだよう。よろぴく」
「はいはい。そんなことよりもう、ご飯できたよ。顔洗っておいで」

いえさっ、びしっと寝起きにも関わらずにきびきびとした動きで洗面所に向かう。これでも目覚めはいいほうなんだよ。

冷たい水で顔を洗う。

「うはあ!冷たいぜ!」

目がよく覚めるでしょう、と早くもテーブルについている悠太が言った。いただきますを待っててくれてる。千鶴とかだったら先に食べてるよ。やっぱり悠太はいいやつだ。ちなみに悠太、わたしはもうおめめぱっちりです。

「よーし、食べましょうありがと悠太!」
「いえいえ、いただきます」
「いただきます!」
「…どうですか、昨日ちょといい卵買ったんだよ。贅沢に目玉焼きにしました」
「うまし!パンに乗っけて食べるの派のなまえさんにはナイスなアクセントだよ。さくさくふわふわ」
「それはそれはよかったです」
「まあ、悠太が作るものは全部美味しいけどね!ふん!」
「なんでなまえが威張ってるの。目玉焼きくらい作れるようになってほしいな奥さん」
「きゃー、奥さんだなんていやだわあなた」
「…」
「美味しいなあ美味しいなあ」

無言になってしまった悠太だけどそんなことよりご飯が美味しくて幸せです。

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