許すよ、きっと


ちょっと前に誕生日だったイケメンの彼は廊下で立往生していた。ピンク色のさらさらの髪を揺らしながら、見るからに動揺しているイケメンくんはいったいどうしたというのだろう。気になったので声をかけてみた。

「もし、そこの君どうしたの」
「わぁなまえさん!」
「はいはい、みんなのなまえさんがお通りですよー」
「なまえさん!この前はケーキありがとう」

美味しかったです、というイケメンを見上げる。前にもそれ聞いたぞ、それ。このイケメンは会うたびケーキが美味だったかどうか言うのか。律儀なやつめ。

「で、どうしたの柳くん。職員室の前でうろうろして」
「…えぇっとですね」

珍しく歯切れの悪いイケメン。右手を首の後ろにまわして困ったような顔をのぞかせる。両の眉が下がっていて、けっこう困っているようだ。

「…」
「…」

しばらく言いにくそうに顔を百面相しているイケメンを観察してみた。なかなか面白い表情をする。見ていて飽きないなふふふ。

「あのですね、さっき生徒指導の先生に呼ばれてしまって」
「あー、あのおっかない先生に。それはうん、ご愁傷様」
「うぅ」
「だ、大丈夫!柳くんなら笑って頷いていれば許されると思うよ」

元気づけるために言った安い言葉だったが、口に出してみるとこのイケメンならその通りなのではないかと、と自分の言葉が正解に思えてきた。女の先生だったら絶対に許してくれるだろうな。

「…人事だと思って」
「人事だもーん」
「ですよね」
「柳くん何かしたの」
「それが思い当たる節がないんですよ」

なんの用なんでしょう、顔を歪めるイケメン。これでも絵になるな。

「んじゃ。頑張ってーいってらっしゃーい」
「…いってきます」
「教室でお話きーてあげるからよ、笑いながら話し聞いてきな」
「…はい」


しょんぼりとした背中が職員室に消えていった。
激怒されることはないと思うのに、たまに神経質なイケメンも美味しいネタだなあ。



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