for you!


「これあげるよ柳くん」


今日も一日平和だったなあ、と夕暮れ時の下校を一人で楽しんでいたら後ろから声が聞こえた。

「…なまえさん」
「やあ柳くんこんにちは」
「はいこんにちは?」

下校中に同級生からこんにちはと言われることは初めてだ。なんだか少し齟齬があるきがする。あ、でもこんにちは、はどの時間帯でも使えるのかな。

「今日も寒いですね」

寒いですねー、といつのまにか隣に並んでいる女の子は僕の台詞を繰り返した。にこにこした顔は寒さなんて感じていないように温かい感じがする。

「本当に寒いとおもってますか」
「思ってますよー。女子なんて足丸出しなんだからね」
「スカート…。そうですね、とても寒そうです」

疑ったりしてすみません、と小さく謝れば茶色い髪はそうだ、謝れ、ひれ伏せ、地に額をつけろと罵ってきた。今日も彼女は絶好調に元気だ。

「それでどうしたんですか」
「うん?なにが」
「なまえさんの帰り道は僕と反対ではありませんでしたか」

少し首を傾けたらこちらを見上げてきょとんとしている瞳と目が合った。

「あ、そだ。これあげる」

そういうと目の前によく見知った半透明のビニール袋が現れた。なんですか、と聞きながらそれを受け取る。彼女は僕の質問には答えてくれないで、満足そうにすぐに後ろをむいて歩いてしまった。

「え、あれなまえさん!?」
「はっぴーばーすでー柳くん。そのケーキ賞味期限今日までだから早めに食べてね」

両手を振りながら走り去っていった彼女。

状況を理解するために頭をフル回転させる。そうだ、今日は僕の誕生日だ。


「なまえさん!ありがとうございます!」

「どういたしまして」

僕の大声に振り返った彼女は寒そうに足踏みをしながら笑っていた。

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