早起きは三文の徳
目が覚めるとそこは見知った天井だった。なんてどこぞの川端さんのような書き出しで始めてみるのも悪くない。枕もとの目覚まし時計の短い針は10と11の間を指している。時間がたつのは早いなあ。さっきまで12を指していたのに。

「あれ、緑間さんいたの」寝室の扉を向くとそこには緑色のマッチ棒のような男が立っていた。入り口と頭がすれすれで毎度ぶつけてしまわないかとひやひやする。
「いたのとはなんだ。昨日お前が朝早くにこいと言っただろう」
「…言ったけそんなこと」
「きさま」
静かに怒りを表す彼はマッチ棒の引火の瞬間のようだ。
「わぁわぁごめんなさい。嘘だよ。覚えてるよ。来てくれてありがとうございます」
「それで用件はなんだ」
「用件というか、一緒に朝ごはんを食べましょう緑間さん」
「…なぜだ」
「もしかして朝ごはん、食べてきちゃった感じですか」
「いや、まだ食べてはいない」
「食べていても一緒に食べてもらうつもりでしたけど」
「…」
「あれですよ、あのー。ちょっと寂しかったってやつですよ。笑ってくだい」
「別に笑わない。なまえがひとりなのは知っているからな」
「なんだかその言い方だと家族がいないみたいじゃないですか」
決してわたしは家族を早くに亡くしてうんたらかんたらとかではない。わたしの両親は1ヶ月ほど海外旅行に行っているのだ。旅行好きの二人はわたしをおいてよく出掛ける。というかわたしがどうしても行きたくないだけなのだが。


「朝は白いご飯に限りますね」
「なんだいきなり。確かにそれは同意するが」
「それと熱々のお味噌汁にふんわりとした卵焼き。卵の味付けは絶対にお醤油です。あ、今日は海苔を入れましょう。風味が豊かになりますよ」
そういいながら手早くご飯の用意をすませる。もうお腹がすいてどうにかなってしまいそうだ。
「さあさあ席についてください。どうぞめしあがれ」
「…いただきます」
「うん。おいしい」
「あぁ。おいしい」
「どう、嫁に欲しいとか思った?」
「朝、なかなか起きないのは難点だが嫁に欲しいと思うな」
「なっ」
自分で言いだしたわけだが素晴らしいすぎる回答に一瞬思考が停止した。それに真顔で言うのだからたちが悪い。
「…」
「…真ちゃんそれは反則なのだよ」




オチは深海5千メートルに沈んでしまいました


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