ぎのざさん視点

サイコパスが濁らない女だと判明してからはや一ヶ月。あの女にはいっかいもあっていない。奴は一回も外出をしていないようだ。考えられない。

別に俺はあの女にあいたいわけではない。サイコパスの濁らないという体質に興味があるだけだ。いま担当しているマキシマの件に似ているかもしれないからだ。だがあいつの話をきくことができない。
そもそも2年もの間、隣に住んでいたのに顔を合わせていないのだから会うことは不可能なのか。いったいどんな生活をしているのだ。

「あらぎのざさんおかえりなさー」
奴のことをかんがえていたら奴がいた。俺の家にいた。前にもこんなことあったな。
「貴様なにをしている」
「お腹が減ったので恵みを求めてきました」
へらへらやるきのない顔がこちらを向いていった。
「恵み?なんのことだ」
「買いだめしておいたカップ麺やカップ麺やカップ麺がそこをついてしまったので、なにか食べ物をください」
にっこりと悪意0のいいえがおだ。
「だが断る」
「だが?」
「あ、いやうん。断る。あ、待てお前にあいたいと思っていたのだ」
「わぁお。ぎのざさんわたしにあいたかったのですか。どうしましょ」
「ちがう。そういう意味じゃない。おまえからサイコパスが濁らない話を聞きたいだけだ」
そうだ。なにわともわれこれはいいきかいだ。リビングのソファーに我が物顔で座っている女に視線をむける。
「お話ですか。わたしそんなに話す気分じゃないんですけど」
「なんだ。飯でもご馳走してやろうと思ったのだがな。それは残念だ」
「まじっすか話ます。話します。何が聞きたいんでしたっけ」
だらんとソファーからこぼれていた白い手足がおもむろに動いた。ちゃんと話をする体制らしい。意外なところで礼儀がある。それかただたんに飯が食いたいだけか。考えて後者だろうという結論に至った。

「お前は以前自分のサイコパスは濁らないと言ったな」
キッチンに向かいコーヒーを落とす。俺オリジナルブランドだ。あの女にもあじあわせてやろう。
「お前じゃないですよーみょうじですよー」
「…影音」
「はーい」
ソファーの上から相変わらずやる気のないような声が聞こえた。めんどうだ。
「そうですね。濁りませんよ。だから勝手にぎのざさん宅に入ってもなんの反応がないんですよ」
確かにそうだ。もし自宅に異常がおきたら俺のもとに通知がくるはずだ。
「もうずっと前からなんですよこの体質。嘘ついても濁りませんよ。別に嘘つく気なんてありませんけど」
そもそもわたし人とこんなに会話したの2,3年ぶりです、とふにゃりと笑っている女を凝視する。女の肩からさらりと黒が落ちる。
「…ひきこもりにもどがあるだろ」
「えへへー気がついたらめっちゃ時間がたってることってあるじゃないですか。それのちょっと長いバージョンですよ」
「長すぎる」
「今の時代自宅にこもっていても生きていけますから」
「…食費とか部屋の代金はどうしている」
「貯金がありますから」
すると女は悲しそうな顔をしてそういった。
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