そこは真っ暗だった。いや、明かりはあったのかもしれない。でもわたしの目は何もうつさなかったのだ。










「…だれだあんた」
「あなたこそだれですか」


ここに引っ越してきてからだいぶたつ。もう二年だ。でも、右隣の住人にはまだ一度もあったことがない。引っ越してきた当時は随分疑問に思ったが、今では、世界にはとっても忙しい人もいるんだなと、どうでもよく思っていた。
そうしたらこの出会いである。宜野座と名乗るこの男はこの部屋の住人。わたしは宜野座と名乗る男の部屋の廊下で寝ていた。なぜ。

「それでお前はだれなんだ」
「あ、えぇっとみょうじです」
「みょうじ?隣のか」
「となり」
「そう隣だ。どういう経路でここに侵入してきたのか知らないがとっとと帰れ」
「…はい。帰ります。なんかお騒がせしちゃってすみません」
「まったくだ」

そういって玄関に向かう。背中の視線が痛い。あ、これは何かご挨拶をしなければいけないのだろうか。社会の常識ではそうかもしれない。

「あの、隣に引っ越してきたみょうじです」


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