「あ"ー、もう出来ませんよ!」
赤い日差しが差し込む部室に俺はいた。本当はこの時期は部室に居てはいけないのだけれど、まぁ特別ということで。部長の俺はもちろん合鍵も常備している。いつでもこの部室を使用できるというわけだ。
「お前が教えろって言ったんでしょ」
「そうですけどー」
この時期とは、テスト前のことである。壁新聞部の後輩が勉強を教えてくれと言うからだ。自分もテスト前であるが別に嫌でもないし、苦でもない。なんの気もない奴なら勿論嫌だろうが、こいつは俺にとっては特別で、たまにのこいつからのお誘いを断る筈がない。
「うー」
勉強を始めてからおよそ1時間が経過。唸りながら机に突っ伏している姿が可愛い見える。重症だ。
「…やらないの?」
「…うーん。やりますよ。せっかく、先輩に教えてもらってるし。でも、ちょっと休憩です」
「10分な。そうしたらまた数学。この問題くらい出来ると思うから」
そういって机の上の藁半紙を指差す。基礎の問題だ。
「あ!これなら出来ますよあたし!」
「お、ほんとか?」
「だって、一昨日、先輩言ってたところですよね。あたし、あれから家に帰ってからやり直したんですよ!何回か似た問題、解きました!先輩が大事って言ってたし!」
急に起きたと思うと饒舌に語り出した。なんだか、頭を撫でくりまわしたくなった。