容赦なく照りつけてくる太陽。光がアスファルトに反射している。なんとも暑そう。たまごを落としたら目玉焼きが作れそうだ。まぁ、僕は目玉焼きなんて低俗な食べ物好きじゃないけどね。


そんななか、いや、なかといっても僕がいるのは涼しい室内だけど。GHQの休憩室はもちろん冷房完備もばっちりで快適な空間だ。そこに僕はいる。僕ひとりではない。もうひとりいる。合わせてふたりこの空間にいる。だか、彼女にとってはひとりの空間らしい。僕が任務から帰ってきて休憩室にいるだろう彼女のもてにやってきたが、まったくの無反応だ。朝と同じ場所にいる。動かなかったのだろうか。決して眠っているわけではない。けんかして無視されているわけでもない…はず。

「…ねぇなまえ」

「…んー」

声をかけてみた。反応ありだ。なんだ無視していたわけではなかったんだね。

「なまえ、腹へった。どこかに食べにいこうよ」

「…んー」

ザ生返事。彼女の目線は微かに上下するだけ。たまに、右手が動く程度で他の動作は皆無だ。なにをしているかというと、読書だ。

なまえは本がすきだ。まさしく、本の虫だ。今もよくわからない言葉で書いてある分厚い本を抱えている。気にくわない。

「なまえ、聞いてんの」

「ん」

「なまえ、きすしていい」

「ん」

きっと会話の内容なんて頭に入っていないだろう。黙々と文字の羅列を読みふけっている。からかいにも反応しないなんてつまらない。

「…、ぅわっ!ちょっとなに!え、少尉?あれ!」
無反応のなまえを押し倒してみた。本日はじめて目があいました。意志疎通成功。

「おまえ、僕のこと無視しすぎ。何様だよ」
軽く放心状態のなまえの首に唇をよせる。びくっと肩を揺らす彼女をみたら無視されたことなどどうでもよくなった。
「あ、えと。少尉たんま!ごめんなさいごめんなさい!」
今更おそいよ、となまえの口を塞ぐ。柔らかくて温かいそれは僕の気持ちを高ぶらせる。

暫くしてとんとん、胸元を軽く叩かれしぶじぶ放してやった。
「ふは!」
潤んだ瞳と視線があう。なんだこいつ可愛いな。襲われたいのか。

「ばか、いまいいところなんですけど」
本のことを言っているのだろう。こっちもいいところなんですけど。
「はーなーしーてー」
じたばた暴れるもんだから上からどいてやった。

「今からあと30分間は私に関わらないでください」
再び本を抱えると酷い宣告をされた。



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