日もだいぶ傾いてきたころ、ふとある人の不在が気にかかった。
「…ねぇジャーファルさん」
「…なんですか」
少し離れたところで手馴れたように書類に目を通し判子を押し続けるジャーファルさんに声をかける。王サマのことならこの人に聞くのが一番早いと思ったからだ。
「…王サマどこいったんでしょうね」
「シンならそこに…」
そういってジャーファルさんは王サマがいつも座っている椅子を指差したが、知ってのとおりそこには誰もいない。
「え?どこに?」
「…あぁぁ!あの人はまたどこかに遊びに行ったのか!なまえ!いつからいなかったのですか!?」
「うーんそうですね。一時間くらい前にはいらっしゃらなかったですよ」
「そんな前から!」
「そうですねぇ」
「気がつかなかったなんて、なんとも情けない」
「いやいや、ジャーファルさんは情けなくなんてありませんよー。素晴らしい政務官サマじゃないですか」
「はぁ、どうもなまえ。私はこれからシンを探してきますので、この仕事頼んでもいいですか」
「どーぞどーぞ。お任せアリー」
「ありがとうございます。では」
風のように王宮をかけるジャーファルさん。
本当に王サマのためなら一生懸命だ。当たり前だけど。
きっと数分後には王サマを見つけてここに戻ってくるだろう。ジャーファルさんに見つけてもらえるなんてうらやましい王サマ。
そんな王サマに嫉妬してしまうなんて自分は心が小さいと思う。