その2

ナッパは相変わらず自分の元を訪れる。ここ最近は殆ど日も空けずに顔を見ているかもしれない。

この地獄に有るのは、真っ赤な血の海と赤茶けた何も育たぬ大地、そしてどこまでも朱い空だけだ。荒い岩肌だらけのここは朝も昼も夜も時間の意味も無く、同じような日々がただ繰り返される。
単調な労働義務と、喧嘩とセックス。ここでの生活は皆せいぜいそんなものだ。僅かな食事も単なる娯楽。別に喰わずとも何も変わらない。とっくの昔に死んでいる。


だが、それだって僅かな違いを除けば、たいして今までと変わりはしないだろう。生きていた頃もそのようなものだった。星を訪れ征服して破壊する。毎回星が変わる以外は同じ毎日だ。
むしろ、どこか幼い頃過ごした惑星ベジータにも似た風景のここは、重力が緩い分快適な位だ。こまっしゃくれた餓鬼だった時の記憶を除き、殆どを各星々のフリーザ軍の基地の中と戦場で過ごしたラディッツにとってみれば、故郷に戻ってきたようなものだ。
聞こえてくる下卑た笑い声はきっとサイヤ人の誰かだろう。自分も同じ声で笑うから間違いない。
いつの間にか、ラディッツにとって、地獄は見慣れた景色となっていた。

「よう、ラディッツ」
「ナッパよ、お前も大概暇だな」
「悪いのか、ああ?」

返り血を点々と戦闘服に残したまま、頭上からナッパが降りてきた。

「何してきたんだ」
「なぁに、適当な魂を2〜3ぶちのめしてきた」
「あんまりそんなことをしていると、お前の方が閻魔の奴に消滅させられかねんぞ。そうなっても、オレは知らんからな」

地獄に来ても、ナッパは相変わらずだ。始めの内は自分も似たようなことをしていたが、段々虚しくなって来た。
魂を消滅までさせないのは、ナッパも自分が消滅させられたくはないからだ。

「オレがそんなへまをすると思ってやがるのか」
「いや、別に」

こんな日々でも、消滅したくはない。同じ毎日が未来永劫続くとしてもだ。

隣に降り立ったナッパは、気が立っているようだった。
落ち着きなさげに脚や手を動かしたり、舌打ちをする。こういう時は、大体が同じふうに物事が進むのをラディッツは知っている。

「収まらん」

何がと聞くまでもない。
不機嫌な顔で口をへの字に歪めたナッパは、いつもと同じように、そのまま犯すだろう。
別にどうってことない、よくあることだ。

ただ、今日はいつもと勝手が違った。貪るように口を吸われ、ラディッツは戸惑った。
まるで、恋人の真似事だ。


今まで自分よりも下級の戦士には、ひたすら気紛れで暴力を振るってきた。
ラディッツ自身も戦闘力が上の戦士には、 虫の居所が悪いと言うだけで叩きつけられた。そして、それが当然の世界で生きてきた。

今更気紛れを起こされたところで、どう反応すればいいのか知らぬ。殴られるなら、我慢すればいい。だが、こんな場合どうすればいいかなんてのは、二人とも知らない。

ただその日、初めてラディッツは自分からナッパの首を引き寄せた。




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