「悟空さ……どうした?」

「いや、何でもねえ」

「別に無理しなくてもいいだよ、言ってもそんな毎晩するような歳でもねえべ」

照れくさそうに笑うチチの頬を優しく撫でながら、悟空は笑った。
小さくて細いチチの身体を抱きしめて、柔らかさを確かめる。
甘いようないい匂いがして悟空は少し感傷的な気分になった。

「何かあったらオラにいうだよ。悟空さはオラの旦那さんだ、
夫婦って言うのは一心同体であるべきだって、昔おっとうも言ってただ。」

相変わらず顔に笑みを浮かべたまま悟空が頷いた。
今、ベジータとやっていることをチチに言っちまったらどうなるかな。
時折そんな思いが胸を掠める。
いくら人並みの常識なんか持たない悟空にでも、それがいけないことだと言う事は判っていた。
自分のことを愛してくれているベジータも愛しいし、何より同じ純潔サイヤ人として悟空はベジータが好きだった。
二人とも可愛いと思うし、自分にとっては無くてはならないものなんだろう。
でも、……二人がくれるものが本当に自分にとって必要なのか悟空自身未だに判っていなかった。


「チチ好きだぞ。」

「おらもだ、オラの旦那様の悟空さは、宇宙一素敵な旦那様だべ」



結局、その夜は昔話を二人で続けただけで、悟空はチチを抱くことは無かった。
形見のウエディングドレスの話を二人でしながら、明日またベジータのところに行こうと、
悟空はそう考えていた。






翌日のこと

遅くまで相変わらず修行に励むベジータの元に再び悟空が現れた。
昨日のことなど無かったかのように相変わらずの間抜けと言ってもいいようなほがらかな顔をしている。

「ベジータ責任取ってもらうぞ。」

「責任?何のことだ?」

悟空いわく昨夜はベジータのことが気になって、と言うか股間の調子が気になってチチと出来なかったらしい。
そこでその責任を取れ、と言うことなのだろう。

「だから、何だというんだ。」

「オラ、あれからおめえの事が気になって、チチと出来なかったんだぞ」

「何ぃ!!お前ふざけるのもいい加減にしろ、何が悲しくてお前と妻の仲まで取り持たねばならんのだ。」

「チチと昨日できんかったんは、おめえの所為だっていってるだろ。そうか、お前オラのこと本当は嫌いなんだな。」

さっぱり意味のわからない事を言う悟空にベジータは苛立っていた。
誰が好き好んで、浮気相手の本妻との夜の性生活の責任を取る奴がいるものか。
ただでさえ不安定なこの関係、いつばれるか正直それがベジータには恐ろしくてならないのだ。

「オラ、チチのこと好きなんだ。」

「知っている、それがどうした。」

と、悟空が不意に話を変えた。ベジータのほうを見ながら表情一つ変えず、悟空はよくこういう台詞を吐くのである。
何も考えていないのか、はたまた考えて言っているのかは定かではないが、
ベジータにとってそれは酷く嫌な台詞であることには変わりなかった。

「でも、おめぇのことも好きなんだ。……でもおめえはオラのこと……。」

「キサマ!好きでもなきゃ誰が好き好んであんなことっ!!」

いつも苛立たせることを言うのが悟空なのだ。
大体そういう風に思っているのは殆どがベジータ自身の方で、悟空がそういう風に考えているのかなんて
正直定かではないと思っていた。それを言うに事欠いてベジータが悟空のことを嫌い!だとのたまうとは。

「でも、オラとヤりたく無いんだろう?」

「く、くそう、責任で何でも取ってやろうじゃないか!」

ベジータのその一言のあと、暫しの沈黙が流れた。
そして、嫌に明るい悟空の笑みが零れる。

「え!?本当かベジータ!!嬉しいなぁ、オラきっとおめえがそう言ってくれると思ってたぞ。」

その瞬間、嵌められたとベジータは思った。
乗せられ易いのが自分の今までの後悔の原因だという事は非常によく判っていたのだ。
だが、こうして又しても嵌められてしまった。ただ、未だにベジータは悟空がわざとやっているのかは、
定かでは無いと思っていた。元々こういう男なのかもしれない。
それに掴まって離れられ無くなったのは自分の責任だ。

その上一度言ってしまうと、もう無かった事にとは言い出せないのがベジータなので有る。
なんて損の多い性格で有ろうか。

「畜生、キサマ嵌めやがったな!」

「何のことだ、ベジータ?オラなんもしてねえぞ。」

相変わらず腹の立つことこの上ないこの男に、ベジータは心の底から怒りを覚える。
そうしてその勢いのまま、照れ隠しの為にも悟空に突然ボディアタックを喰らわせると無理矢理床に引きずり倒したのだった。
悟空の背中に固く冷たい重力室の床が当たる。
僅かに感じる湿り気は、ベジータの汗なのだろう。いつも遊びに来ているだけの悟空とは違い、この部屋の中はベジータの居場所なのだ。
ベジータが一日の大半を過ごすところ。


「覚悟しろ。」

そう一言ベジータは呟くと、悟空のつま先の方を向いた形、悟空の顔の方に背中を向けた形で
胴体を跨ぐようにしっかりとお腹の辺りに腰を下ろした。
まあ要するに馬乗りの姿勢と言うわけだ。そのまま道着のズボンに手を掛ける。
普段しないような行動に苦労しながらもゆっくりとズボンを下着と共に引っ張り下ろすと、
やがて期待でわずかに勃ちあがった悟空のモノが姿を現した。

ベジータはそれをおそるおそる左手の指で摘まむように手に取ると、
右手で柔らかく握り込む。

「ベジータがこんなことしてくれるなんてよ。」

「っ!このまま握り潰すぞ!!」

「ちょっ!それはめちゃめちゃ困るぞ!!!」

その台詞はまるでそのまま昨日の焼き直しのようであったが、何はともあれ
ベジータは握った右手をゆるゆると上下に動かし始めた。
ぎこちない手つきながらも、悟空もなかなかに感じているらしく時折小さく呻き、
その度にベジータはビックリしたように動きを止めてしまっていた。
段々そのモノが勃ち上がってくるにしたがって、ベジータは空いている左手で、先端の辺りも指で刺激し始めた。
くりくりと撫でるように動かすと反応する悟空に僅かながらも優越感を掻き立てられたのだろう。
最初はおそるおそる嫌々であったベジータだったが、やがて少しづつ乗り気になって行っている様子が見て取れた。
相変わらず中身は成長していないと言ったところか。

「さっさと勃たせろ、キサマ。」

そんな無茶苦茶なことを言うベジータに、悟空は困ったような顔をする。
男の生理現象というものはそう単純なものではないし、
実際今現在はベジータの手によってなかなかに早いスピードで元気になっているところなのだが。

そのうちにむくむくと大きくなった悟空のモノを確認すると、ベジータは急にピタリと手を止めた。
そうしてそのまま急に固まったかのように動きを止めてしまった。

「どうした、ベジータ?」

そう悟空が背中越しに聞いたがベジータは答えない。
暫くそうしたままだったのだが、不意にベジータが悟空の上から立ち上がると幾分離れたところまで移動した。
仕方なく悟空は先ほど押し倒された身体を起こし、その後を追う。
足元に纏わりつく自身の胴着を煩わしく思ったのか、ご丁寧にその場に脱ぎ捨てて、だ。

「向こうを向いていろ」

ベジータが大きな声で悟空にそう言った。幾分先程よりも艶のある声に聞こえるのは気のせいではないだろう。
悟空のモノを見てベジータは興奮を覚えていたのだ。

「何でだ?」

「いいから、向こうを向いていろっ!!」

勝手にどこかに行ったかと思うと急にそんなことを言うベジータに悟空は少し不満に思ったが、馬鹿正直にそのまま背中を向け座りこんだ。
実のところ中途半端に放置された下半身と言うのはきついものが有ったのだが、そこは悟空、いつもながら素直は素直なのだ。
しかしながら、この悟空の座っている位置というのは前面に磨きこまれたトレーニングの機械があり、
ベジータが何をしているかはよく見えていたりする。

そんなことは露ほども知らぬベジータは悟空が見ていないと安心したのか、自分のトレーニングウェアのスパッツをおもむろに脱ぎ始めた。
流石に下着を脱ぐ際には躊躇していたが、ゆっくりと自分でグレーのぴったりとしたボクサーパンツを下へと降ろす。
そのまま下半身裸の露な状態になると、床の上で膝立ちの姿勢を取った。
自らの左手の中指と人差し指を口に咥え舐めしゃぶる。
その様はなかなかに淫猥で、悟空は下半身が痛いほどに張り詰めているのを感じていた。

唾液で光る指を口からゆっくりと出し、ベジータは目を瞑る。
そうして、顔を湯気が出そうな程真っ赤に染め息を一つ吐いたその後、その指を自身の後ろへとあてがった。
小さな呻きと共に内の柔らかい部分に押し込める。
自らの唾液の働きで指は割合するりと中に入り、熱い内を自分の指で感じることにベジータは背筋が少し寒くなった。
何が悲しくってオレがこんなことを……とでも思っているのが、顔によく現れているのが見える。
まあ、だったら後ろを向いてる隙に悟空を殴るなりなんなりして逃げればいいと思うのだが、
そんなことはカッカした頭には浮かばないのだろう。
悟空のモノを受け入れる為にも、自分で言い出したからにはこうして何とか自力で慣らさないと行けないのだ。
恐る恐る指をもう少し深くまで入れると、いつものイイ場所に指の先が当たる。
僅かに震える身体を持て余しながらも、ベジータは指をゆっくりと動かした。
先が当たらないように注意して動かしてはいるようだが、時々当たるのだろう、
顔を歪めては下唇をぎゅっと噛み締めているのが悟空にはよく見えた。

ゆるゆると抜き差しを繰り返すたびに、吐息が漏れる。
元気の無かったベジータのモノも、段々勃ち上がりかけていた。
やはり前が疼くのか、時々空いているほうの手が自身のモノへ伸ばされようとするのだが、
その度にベジータはビクッと手を震わすともう一度手を下ろした。
自分で快楽を貪ることはどうしても耐えられないのだろう。
声を必死で押さえながら、ベジータは暫くそれを続けていた。

「オレの方を見ないまま、床に寝転がれ。」

ようやく納得が行くまでやったのか、いやそろそろ自分で虚しくなってきたのかは定かではないがベジータは悟空に急にそう言った。
実はこっそり見ていた悟空だったのだが、そんなことはおくびにも出さずこれまた素直にその場で床に仰向けで寝そべる。
そうして、その悟空の上にベジータが雄雄しくも下半身裸のまま仁王立ちで跨った。

「動くなよ、絶対に動くな!」

「本当に……大丈夫か?なあ、もしなんならオラが……」

「うるさいっ!!おまえは黙っていろっ!」

まともに力の入らない脚で寝転がる悟空に跨り膝建ちになる。
膝がガクガクし、へたり込みそうになるのを必死で我慢しながら、ベジータは悟空のモノを掴むと、自分の後ろに押し当てた。
後孔に熱い熱を感じる。自分から入れるのは当たり前だが、相当な羞恥心を伴うものだ。
しかし、今日は自分からすると言ったのが運のつきである。
例えその場の勢いで言ってしまったとしても今更無理だと言うのはベジータのプライドが許さないのだ。
やけっぱちでベジータはゆっくりと腰を下ろしていった。

くちゅりと言う音と共に、大きな質量を持ったものが体内に埋め込まれて行く。
少し入る度に背中をぞわりと寒気に似たものが走った。
息苦しさに生理的な涙が流れ、ベジータの顔を濡らす。
じわじわと浸食されて行くような恐怖はいつも以上に酷く、全部が中に収まるとベジータは小さく息を吐いた。
自分の中に自分で無いもののビクビクとした脈動を感じ、ベジータは違和感に身体を震わせる。

体勢のせいでいつもより奥深くまで入っているようだ。
身じろぎをする度に中が反射的に締め付け、甘い痺れが全身に広がる。

一方の悟空は…危なかった。この体勢はベジータの全身がよく見えるのだ。
可愛らしい顔から細い腰…そして、自分が繋がっている部分まではっきりとしっかりとそれはもうよく見える。

「…っきさま…」

掠れた声でベジータが呟いた。

「絶対に…こっちを見るなよ……っ」

「…はは、もう見ちったな。」

その台詞にベジータは悟空の顔を軽く右手で殴った。
痛みに悟空が気を取られている隙にベジータは再び動き始める。
ゆるゆると腰を上げると、力無く崩れ落ちる。
必死で自身の羞恥心に耐え、震える膝で腰を動かすベジータに悟空はいつも以上に煽られていた。
自身のために動いてくれているかと思うと堪らないのだ。
熱に浮かされたような潤んだ目、紅潮した顔、少し開いたままの唇からは腰を下ろす度に甘い息が洩れ、
深くまで貫かれる度に切なげに眉が顰められた。

「ん……ふ……っ」

段々と切なげになっていく声が悟空の我慢を少しずつ削っていく。
そして、幾度目かの抜き差しの際の事だった。
不意にベジータがバランスを崩して悟空の胸の辺りに両手をついた。
胸元についたその手は恐ろしいほどに熱く、胴着越しですら熱を確かに感じる。
そう悟空が考えた瞬間、悟空の中で何かが外れたようだ。
急にベジータの腰を掴むと、しっかりと固定し自分の膝を立てた。

「動くな…ぁ…今日はオレが…すると言ったろうがっ」

ベジータは抗議したが、有無を言わせず悟空は下からズンと突き上げた。

「………っぐぅ!!!!!あああっ!」

これ以上無いというほどベジータの背中が反り返る。
のっけからかなりの速さのストロークで悟空は挿出を繰り返した。
悟空が下から激しく突き上げるたびに、ベジータのモノは揺れて先走りを悟空の腹の上へとポタポタと零す。
内壁を抉る硬いモノは的確にベジータの感じるところを突き、眩暈のするような酷い不快感にも似た感覚の中で
ベジータは我を忘れて声を上げた。

「あ、あぁっ……!!も、くそ……ああああああっ!」

がくがくと揺さぶられ悲鳴を上げる。今回ぐらいは自分が上位に立とうと思っていたのだ、だが又しても。
嫌に高い声が聞こえると思っていたが、それが自分の喘ぐ声だとベジータが気付いたのは暫くしてからだった。
ぎゅうぎゅうと悟空のモノを締め上げ喰い付き、包み込む。
回を重ねるごとに身体が変わっていくようだった。

ぴったりと張り付いたウェア越しに、悟空はベジータの胸の突起を強く摘まむ。
ぴりりと走る痛みさえも間違いなく快感で、指の腹で押しつぶすようにされると鼻に掛かったような甘い声がベジータの口から漏れる。

「相変わらず、弱ぇなココ」

息の上がった声で悟空がそう囁く。

「うるさ…っ……あ、ッア!!……っぐ!?」

頭の中で何かが焼ききれたような感じをベジータは味わった。
射精感やそういうものとは又違った圧倒的なまでの、混乱の果てにあるようなそんな状態。
身体を激しく痙攣させ、真っ白になった目の前をベジータが自覚する前に、ベジータは悟空の身体へと大きく倒れこんだ。
かろうじて意識はあるものの、感覚がついていって居ないようで、ヒューヒューと喉を鳴らしている。

そうしてそれとほぼ同時に、悟空もベジータの中で絶頂を迎えていた。



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悟空の隣では、ベジータが眠っていた。
先ほどの情事の所為で体力も精神力も,オマケにプライドも使い果たしたのか、ぐったりとしていて力なく布団の上で横たわっている。
殆ど動けなくなったベジータを部屋まで抱えて運んだのだ。
運ぶ間は、まだ僅かながらも悪態をついていたベジータだったが、部屋に着いた頃にはすっかり意識は夢の中へと旅立っていた。
聞こえるか聞こえないか程度の小さな寝息に悟空は小さく微笑む。
そうしていると一人残してきたチチが不意に気に掛かり、悟空はパオズ山の方を探った。
いつもは隣に感じるチチの気をこうして遠くで探るのはどこか不思議な気がして、
悟空は少し目を伏せる。そのまま、チチが既に寝ているのを確認すると悟空はひとつ息を吐いた。

もう一つ本当に近くの気を探る……そう、ブルマの気だ。
今日はブルマは一人で眠っている。ベジータは悟空の隣で眠っているのだから当たり前の話である。
だが、悟空はそれを何故か確認せずにはいられなかったのだ。
身体を起こすと、悟空はベジータが自分の隣で寝ているのをもう一度確認する。

「ベジータ好きだぞ」

顔を見つめほくそ笑みながら小さく悟空はそう呟いた。
だが、昨日のチチのようにベジータから返事は返っては来なかった。
そっと布団から出た肩に手を置くと、鍛え上げられたしなやかながらも固い身体が手に当たる。
決してチチのように柔らかくは無かった。ベジータとチチは違うのだ。
判っているが、やはりよく分からない。

そうして悟空はそのまま眠りへと落ちていった。
小さく作られた重力室の窓の外、そこには煌々と輝く満月がただ有った。

END








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