「僕が来るって分かって居るのに、どうして居なくなってくれないんですか。此処に、神殿にピッコロさんが居るって分かっていたら会いに来たくなる。僕のこと好きなら、どうして何時までも此処に居るんです」

ピッコロを壁際に押し付けたまま、悟飯はそう言った。目をそらし続けたままのピッコロの顎を掴むと、無理矢理に自分の方を向けさせる。
ほんの一瞬だけ交差した視線は、再びピッコロが目を閉じたことですぐに絶たれた。


「僕は、来月ビーデルさんと結婚するんです。貴方に会いに来ちゃ行けないんです。分かって下さい、お願いです」

口付けようと上げられた踵は、唇が唇に辿り着く前に、静かに下ろされた。そのまま力無く、悟飯は床に子供のように座り込む。


「どうして貴方は」

目を閉じたままのピッコロを、悟飯は仰ぎ見る。鋭角的な顎のラインを見れば、キリキリと胸が痛んだ。

「どうして貴方は、それでも僕に優しいのですか。こんなにも理不尽なことを言っているのに。身勝手な僕をどうして軽蔑してくれないのですか」

薄く開けたピッコロの目が、赤く鋭く光った。ルビィのように輝くそれは、深く重く赤く静かに、悟飯の握られた拳を見つめる。

「……お前を、傷付けると分かって居て、来ることを期待してしまうオレのどこが優しいという」

「お前の幸せを心から願ってやれぬオレが、どうしてお前を軽蔑出来る」

風が、吹いた。



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