天に思うのは
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ぼーっと天を見上げていると肩を叩かれた。振り向くと幼稚な手に引っ掛かる
ふにっと頬を突き刺す指。睨んでやるとごめんごめんと爽やかな笑顔
まぁ、こんなことで本気で怒るわけがないので目を逸らしてまた天を見上げる

「何見てるの?」

言いながら同じように空を仰ぐ獅子はキザなまでに高そうなスーツを着こなしている
そういえばこのスーツは精霊界に売っているのだろうか。それともこっちで購入して帰るのか
まぁ、そんな事は実際どうでもよくてただ天を見上げていた

「何も見てねー」

「ふ〜ん・・・」

何も無い天に何を思うのか
そんな事どうでもよくてただ吸い込まれそうな青空を見ると何もかもどうでもよくて

「グレイ・・・」

目元に落ちる暖かい柔らかな感触にハッとするとそれは獅子の唇だった
思わず後ずさると追うように抱きしめられる

「おい、やめろよ」

「やだ」

突き放そうにもしっかりと抱きしめられたカラダが案外心地よくて強く押し返すことができない
その暖かさが何故か心に沁みて目元に涙が溢れてきた
抱きしめられたままの状態で目元を押さえることもできず涙をこぼすまいとまた天を仰ぐ
獅子に何を思うのか。また獅子は何を思うのか
相手の心の中なんてわかるはずがない。あるとすれば自分の嘘偽りの無い心
それでも、長い事自分を押し殺してきた分、素直になんてなることができない
解っている筈なのに。

「ねぇグレイ、僕は・・・・・・。ごめん・・・ルーシイが呼んでる」

「・・・あぁ」

俺は我慢してるわけでもない。ただ、何を思う?
先ほどまであった温もりがふわんと消えて天を仰げばまた同じ光景が見える
ただそれだけだ
頬を伝い落ちてきた一筋の涙が風に吹かれて消えていく
おもむろに天に手を伸ばしてみても空を切るだけで何も掴むことができない
儚い胸のうちを表しているようで何故だか笑いが込み上げてくる

「やべー・・・マジでありえねー・・・」

乾いた笑いを噛み殺すと瞼を閉じる。心の中では二人笑いあって生きているから

end.
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2012.05.10(12.11再掲載) RIU.

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