IZAYOI
R18指定(嫌悪感のある描写が含まれる可能性があります)

22

N.side

その漆黒の髪は冷気の破片を浴び艶やかな光を反射していた。恋焦がれた黒曜石のような瞳には魂まで吸い込まれそうな錯覚をおこす。そこに居たのは見間違えるはずが無い相手であった。
8日振りに見る顔は幾分か痩せて見えるが特に目立った外傷も無い。ホッとする気持ちが勝って近寄ろうとする

「よかった・・・。!!」

駆け寄ろうとした時に跳んできたのは氷でできた槍『槍騎兵』だった
咄嗟に身を翻してかわすものの多少掠ったらしく腕に擦り傷ができていた

「グレイ?」

眼前にいる人物はたしかにグレイの筈であるのにその瞳には冷酷なまでの光しか宿っていないのが見てとれる。先ほどまでの高揚感から一気に沈着してしまう

「ギヒヒ・・・さすがの火竜もコイツには手が出ねーか?」

ガジルはグレイの肩に手を回した。それを嫌がることなく受け入れるグレイ。明らかなまでのグレイの変化に動揺してしまう
ただその瞳にはきちんと生気が溢れており、何かに操られているという感じには見えないのだ。

「おめー、マジでグレイに何しやがったんだ・・・」

「さぁな」

ともかく、今はこの眼前の敵を倒すしか道はなさそうだ
グッと拳を握ると吹き出す炎を纏わせる。踏み出す足に併せてガジルに攻撃を仕掛ける

『火竜の・・・鉄拳!!』

『アイスメイク・・・盾(シールド)!!』

突然現れた氷の壁を叩き割る。破片がキラキラと零れ落ちていく

(ちくしょー・・・)

『アイスメイク・・・大槌兵(ハンマー)!!』

「っ!!」

続けざまに繰り出される技に舌打ちすると頭上に現れた巨大なハンマーを寸でのところでかわす。
魔法を使わないただの喧嘩であれば思いっきりできる。だが、今のグレイからは自分を倒そうという殺意が伝わってくるのだ。

「グレイ!!目を覚ませ!!!」

冷たい顔をしたままで表情に変化は現れない。俺がわかんねーのか?

『鉄竜棍!!!』

突然、頬に痛みが走る。腕を鉄の棒に変えたガジルが口端を上げ嫌味な笑みを浮かべている

「おいおい、余所見してんじゃねーぞ。おめーの相手はココにもいるんだぜ?」

ガジルに向け駆けだした足に炎を纏わせると大きく蹴り出す

『火竜の鉤爪!!』

間一髪でかわすガジルの顔を鷲掴みすると両腕に炎を纏わせる

『火竜の!翼撃!!』

「ぐあっ!!」

吹き飛ばされるガジルが温室の窓ガラスを突き破る
破られた窓から突如として甘い匂いが流れ込んできた。その花独特の薄らとした甘い匂いに一瞬気を取られてしまった

『アイスメイク・・・戦斧(バトルアックス)!!!』

「ぐっ!!」

腹部に強烈な一撃が直撃して思わずうずくまる。素早い造形が得意なグレイを思い出し思わず頬が緩む

『アイスメイク・・・大鎌(デスサイズ)・・・・・』

次の一撃を予見して身を強張せるが思った衝撃がこない

「ん?」

先ほどのグレイがいた筈の場所を見てみるとカラダを前のめりにしてゆっくりと倒れていくアイツの姿がスローモーションのように見えた
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2012.01.31(12.07再掲載) RIU.

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