IZAYOI
R18指定(嫌悪感のある描写が含まれる可能性があります)

21

前方に見えるのは正面の入口。見たところ見張り等は居ないようだ。中に入るためにはここしかない。
既に建物の周辺をぐるりと見て回ったもののドアどころか窓さえも無かったのだ

「ナツ、お前はグレイの事・・・」

エルザは聞いてもいいものかと言い淀む。チラりとナツをみやるとブレの無い瞳で前方を見据えていた

「あぁ、大嫌いだった。だけど、いつの間にか目が離せなくなって・・・。エルザ、人を好きになるって苦しいけど、本当に苦しいけど、いいもんだな」

「そうだな。」

ナツは軽く笑みを零し前方に見える建物を見るとアドレナリンが沸き立つかの如くカラダが身震いする。

「ナツ、今回は偵察という名目だ・・・。できるだけ慎重に頼む。闇ギルドとは云えギルド間抗争は御法度だからな」

「あぁ、わかってるさ。エルザこそ羽目を外しすぎるなよ」

「建物の構造が分かってないのが問題だが、お前の嗅覚なら大丈夫だろう。私がまずは入って敵の目を引き付ける。お前はグレイを頼む」

目と目を合わせて頷き合う。何よりも仲間を想う気持ちはエルザもナツも人一倍強い。
低い体勢で建物内に侵入するエルザに遅れる事数分、ナツは大きく息を吸いこむと気持ちを落ち着かせるようにゆるりと肺の中の空気を吐き出した
慎重に建物の影に身を潜め中の様子を伺うと中からは物を切り裂く音が聞こえてくる
一瞬軽く瞼を閉じると愛しい人の姿が目に浮かぶ

『よし、行くか!』

勢いよく立ち上がるとそのまま中へ走り出す。敵の目はエルザに向かっているらしく中に入ってすぐはナツに目を向けるものは居なかった。
軽く鼻を動かしてみると微かに香る甘い匂いの中に嗅ぎなれた匂いを感じることができた

『あっちか・・・』

見えた階段を慎重に駆け上がる。階上手前で誰かの気配を感じ壁に沿って様子を伺うと何人かの話し声が聞こえてきた

「侵入者だそうです。早く始末を!」

「あの薬を狙ってきたのかもしれない。あの場所は気付かれないようにしなくては」

「しかし、今はアリア様は居ない。空域を破られてしまえば・・・」

声はだんだんと遠くに行き聞こえなくなった。

『クスリ?何のクスリだ!?この匂いに関係あるのか』

ソッと廊下を覗き見ると人影は無い。とにかくもまずはグレイを助けることを念頭に行動しなくては
入り組んだ廊下を匂いを頼りに走る。途中、何人かの敵に合うが戦闘職では無いのか軽く拳を当てるだけで沈んだ。
この程度の敵であれば造作も無い。どれくらい走ったのだろうか、長い廊下を走っていると初めて窓らしいものが見えた
覗いてみると赤い花が咲いていて温室のようであった。

『小さな赤い花・・・あの匂いの元か?』

空気を切り裂く気配に振り向くと同時に横に跳び間一髪のところで鉄の塊を避ける

「お前は・・・」

「よぉ、火竜。たしかナツと言ったな?俺は鉄竜のガジル」

「てめぇ、グレイに何した?」

「ギヒヒ・・・。さすが鼻が利くな。何をしたか?知りたいか?」

地の底から沸き立つような怒りの炎が身を焦がす。

「おめー、グレイに・・・このやろぉぉぉ!!!」

炎を纏った拳をガジルに突き立てようとすると冷気の壁が眼前を被った

「グレイ・・・・」

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2012.01.30(12.04再掲載) RIU.

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