IZAYOI
R18指定(嫌悪感のある描写が含まれる可能性があります)

20

二人の引力が互いを引き寄せる
偶然でも必然でも無い
何も焦ることなんかないんだ
ただその存在が愛しいだけ。傍に感じていたいだけだから。


頭の中が霞み掛かっていて何かをはっきりと思い出すことができない。
今いる自分が本当の自分なのか、それとも誰かが作りだした幻影なのか
もしかしたら夢を見ているのかもしれない。この世界は夢で本当の世界は・・・どこにある?

不意に肩を叩かれ霞む思考が呼び起された
誰だと顔を上げてみると見知った強面の顔が目の前にあった

「何考えてんだ?」

「あ・・・」

答えようとするものの降りてきた顔によって唇が閉ざされる
冷えた舌が口を割るように入ってくると背中を駆けのぼる感覚に身震いする
いつの間にか押し倒され唇を堪能する音が耳をいたぶる
お互いの舌を絡め合う頃にはカラダの奥がジンワリとした感覚に犯されていった
この行為自体に嫌悪感なんて無い。雄という本能のみで突き動かされてしまうのだから
だけど・・・何かが心の奥でひっかかる
息が上がりかけてやっと離れた顔をみやると口元が唾液で光っている

「なぁ・・・俺ってどれくらいココにいる?なんかいろいろ思い出せねーんだ。」

「さぁ、どれくらいかな・・・んなことどーでもいいじゃねーか」

そういって頭に添えた手で髪を撫でてくる
ほんの少しの暖かさが気分を落ち着かせることができた
目の前の鉄竜は不安を払拭してくれている。それが今の自分にとってどれだけ大事な事だろう
記憶が定かでない自分にとってガジルが居なかったら自分はどうしていたかわからない。
ニコリと微笑むと自分からガジルに唇を寄せていった

今は安心感が欲しかった。ただそれだけだ。
それだけの筈なのに、暗闇の中にいるもう一人の自分が何かを訴えかけてくる
桜色をした花びらが風に舞って吹き荒れる
掴みとろうと手を伸ばすもののその手は空を切るだけである

『なぁ、俺を捕まえてくれ。本当の俺は何処にいる?』

今にも深い闇に落ちてしまう・・・
この渦に巻き込まれたらもう戻ることはできない

『早く、早く、早く 助けて・・・・・ナ・・ツ・・・』


「グレイ!?」

パッと顔を上げ目の前の建物を睨むとすぐにでも走り出そうとするナツを必死に食い止めるエルザ

「ナツ、慎重にしないと助け出せるものも助けられんぞ」

下唇を噛むように唸るナツは確信していた。

「グレイはココの中にいる・・・」

「そうか・・・」

二人は目標物を見極めるように前を見据えた。まずは安全に事を進めなくてはいけない。

「グレイ・・・今いくからな・・・」

二人の引力は誰にも止めることができない
奇跡でも運命でも無い
ただ、思い合うココロがお互いを引き寄せる
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2012.01.28(再掲載2012.12.01) RIU.

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