IZAYOI
R18指定(嫌悪感のある描写が含まれる可能性があります)

06
マグノリアにあるギルド『フェアリーテイル』何時もなら喧噪としているギルドだが今日は比較的静かである

「なんだー?またグレイ来てねーのか」

ナツは桜色の髪を揺らしながら不服そうに呟く
氷の造形魔導士のグレイは最近、ギルドに顔を出していない

「前回の仕事の報告しに来たのを最後に来てないわね〜」

カウンターで仕事をしていたミラがナツの様子に気付いて声をかけてきた

「体調でも崩したのかしら?ナツ、よかったら見にいってきてくれないかな?」

ミラが優しい笑顔で頼んできたら断るにも断れない

「ミラの頼みじゃしょうがねーな・・」

ナツは口では不服そうであるが、瞳がキラキラしている。誰が見てもうれしそうな顔である。

「よし、ちょっくら行ってくるわっ」

ナツは意気揚々とギルドを後にした


「おーい、グレイいるか?」

ドアをノックしても声をかけても返事がない。グレイの匂いがするので部屋にいるのは確かなはずだ。

「うぉぉーい、グレーイ!!」

先ほどより大声で怒鳴ってみても返事がないが、部屋の中でかすかな動きがあったのが感じられた
ガチャっと音がしたと思ったらドアが開き、グレイの黒い髪が見えた

「いるなら返事くらいしろよ・・・」

とりあえず、不服を申し立てるナツであるが、グレイの様子がおかしいのに気づく

「うるせー、クソ炎・・・」

グレイからなんとか出た言葉であるが、壁に寄りかかって呟くように言っているため、拍子抜けしてしまう。何より薄暗い玄関からでも顔色が冴えないのがわかる

「おい、どうしたんだ?」

問いかけてみるも、当の本人は何でもないと言うだけで話にならない
それでも食い下がらない俺を見て、ため息をついたグレイ

「本当に、大丈夫だから・・・ちょっと、具合が悪いだけだ」

納得したわけじゃないが、具合が悪そうなのは確かだ。これ以上、立たせたままなのも余計酷くしてしまいそうなので折れることにした

「・・・・・ちゃんと寝とけよ」

「あぁ、じゃぁな」

そういって扉は音をたてて閉じた
俺はその硬質なドアを見つめて何か違う匂いを感じ取っていた。
『甘い?匂い・・・』
不確かな匂いに何か引っかかりながらもそこをあとにした

『鼻が利くのも考え物だな・・・』

薄暗い部屋の片隅に黒い物体が小瓶を手の上で転がしながら息を殺すようにして壁に寄りかかっていた。
ふと、目の前のベッドに横たわる氷の造形魔導士を横目で見やるが既に深い眠りに落ちているようで胸が規則正しく上下している

『ふんっ今日のところは消えるか』

グレイの白い肌を軽く撫ぜ名残惜しむかのように黒い髪を指に絡ませたかと思うといつの間にか居なくなっていた
そこには甘い残り香だけが薄く空気に溶け込んで束の間の静寂だけが広がっていく
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