Halloween Happiness


プラチナブロンドの髪が揺れ、漆黒のマントを翻すと肩に着いたシルバーのチェーンを嵌めた
傍にあった杖を持つと見目麗しいまでのヴァンパイヤの出来上がりである
アッシュは鼻を鳴らすと未だに寝室でぐずっているであろう英二の所へ向かった

「英二?用意はできたか?」

声を掛けながら部屋のドアを開けると真っ白な服を着た英二がベッドに突っ伏していた
英二は枕に顔を押し付けながらくぐもった声を出した

「なんか、もうヤダ・・・」

「英二・・・そんなに嫌なら無理して着る必要ないぞ」

さすがにここまで落ち込まれてしまっては慰めるしかない
アッシュは英二がいるベッドに近づくとある事に気付いた
中途半端な位置でとまっている背中のジッパー
背中の半分くらいは肌が露出していた
無意識に手を目の前の無防備にさらされた背中に沿わせた

「わっ!!」

ビクリと反った背中に我に返ったアッシュは僅かに上気した頬を悟られないようにゆっくりと息を吐き出した

「・・・背中のジッパー・・・上げろよ」

「ダッテ・・・届かないよこんなの」

「しょうがないオニイチャンだなー」

言いながら中途半端な位置で止まっていたものを上まであげた
うつ伏せのままでいる英二はやっと顔を少し上げてアッシュを見上げる

「せっかくだし・・・行くよ」

「無理するな」

「いいよ、どうせ皆、仮装してるだろうし」

諦めたように軽くため息をつくと気合をいれるように小さな声で『よしっ』と呟き英二は跳ねるように起ちあがった
そこからは早かった素足のままだった足にジーンズを履きうさ耳を頭につけると開き直ったかのように満面の笑みを浮かべた

「どうせだから楽しまなきゃね!」

「あぁ、そうだな。だけど・・・白いワンピースの下にジーンズ履くってどうなんだ?」

「スースーして寒いんだよ。この際、そんな細かいところ気にするなよ」

「まぁ、たしかに野郎の足なんか見る奴なんていないだろうしな」

アッシュは頭の先から足の先まで一通り眺めるとそろそろ行こうかと英二を促した
その時、玄関のチャイム音が聞こえてきた

「あれ?誰だろ?」

英二は自分がどんな格好をしているかを忘れたようにトタトタと玄関まで走っていきドアを開けた
ドアの前に居たのは黒い短髪の上に犬のような耳をつけたシンだった

「よぉ英二!Treats or treats?」

「わっシン!お・・・お菓子!」

「ほらよ」

そうなることを見越したようにアッシュはシンに向かってキャンディを投げた

「うわっ!なんだよ、キャンディ1個だけかよ」

「お前にはそれで十分だろ」

アッシュは先ほどまでの自然な笑顔が消え、いかにも嫌そうに顔をしかめていた
そんな様子に気にも留めないシンは貰ったキャンディを口の中に頬張ると英二を見た

「英二、だいぶかわいい恰好してるな!」

「うっ・・・シンだって可愛い耳つけてるじゃないか」

「これはオオカミの耳だからウサギさんを食べちゃうぞぉ」

「あははは。オオカミだったんだ!」

そんな二人の様子にすっかりと機嫌が悪くなったアッシュは突然マントを翻して英二をマントの中に隠した
スッポリとその姿を隠してしまったマントの中でアッシュの腕に抱きしめられた状態の英二
突然の出来事に慌てているとアッシュの声が聞こえてきた

「ウサギはオレの獲物だからお前はさっさと消えるんだな」

「えぇ!?って、ハロウィンパーティ行くんだろ?一緒に行こうぜ」

「ウサギさんはちょっと具合が悪いみたいなんだ。今日の予定はキャンセルする」

マントの中ではアッシュの腕に絡め取られたままの英二がアッシュの言葉にビックリしていた
先ほどまではいざパーティに如何と用意していたばかりだったのに一体どういうことだと呆然とその言葉を聞いていた
そして、パタンと閉まったドアの音にシンが帰ったのがわかった

「アッシュ?」

強く握られたままの腕に軽く手を這わすとアッシュの腕が離れやっと解放された
マントの中からやっと出てきた英二は振り向きアッシュの顔を見ると瞳が揺れ顔が幾分か赤いのがわかる

「悪い・・・」

顔を隠すように手を口元に持って行き目を彷徨わせるアッシュに英二は微笑む

「具合が悪そうなのはヴァンパイヤの方じゃないか!仕事のし過ぎで疲れてるんだよ。パーティはもういいから君は少し休むといいよ」

「・・・・・あ?あぁ」

アッシュは目の前の無意識に人を魅了するうさぎを残念な思いで見つめていた
何故こうも鈍感なのだろうか
失念していたのはシンだ。あいつは何かとココにやってきては英二にちょっかいを出してくる
こんな状態の英二を他の奴ならともかくシンに見せるなんて事とてもじゃないができない
シンは英二に対して友情以上の気持ちを持っているのがわかるのだから
アッシュは英二に促されるままに寝室に行くと自分のベッドに腰掛けた
英二はアッシュのおでこに手を添えると「熱は・・・無いかなぁ?」と首を捻る

「英二、Trick or treat! 」

「えぇ!?」

突然のアッシュの言葉に英二はキョロキョロとした
寝室から見えるダイニングテーブルの上にあったキャンディの袋が目に入り急いで取りに行った
素早くアッシュの元に戻り、キャンディを一つアッシュの手に落す

「Boo! From me to you. Happy halloween! 」

英二の笑顔に釣られるようににアッシュの顔も柔和な笑顔を作った
二人が出会った偶然に、二人の未来に、
この素晴らしいハロウィンの夜に祈りをこめて

『Halloween Happiness!』

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そういった事に抵抗があるかたは読まずにTOPにお戻りください
2012.11.02 RIU.

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