Again
04


光が増すカーテンの隙間を眺めながらも僕は何を考えていたんだろう
いや、きっと何も考えてなんかいなかったんだ
ただ悪戯に増す光がなんとなくおもしろくて眺めていただけだった
徐々に柔らかくなっていく明るさにすっかりと夜が明けているのがわかる
あんなに重かった身体が痛みはあるものの軽やかに感じる
それになんといっても心の中の重苦しさが無いのだ
何故かはわからないが・・・

その時ドアをノックする音が聞こえたと同時にドアが開けられた

「おはよう。エイジ!もう起きていたの?今日は退院だけど、朝の検温は忘れないでね」

ドアから顔を覗かせたのは赤毛を後ろに束ねソバカスがチャーミングな看護師だった
僕は彼女の言ってる言葉がすぐに理解できずに呆然としていた
だけど、赤毛の看護師はそんな僕の様子を気にする風でもなく病室のカーテンをサッと開けると軽くウィンクし部屋から出ていった

「退院・・・?」

何故、僕が退院なんだろうか。再び着ていた病衣を捲ると痛々しい包帯が見える

「僕・・・どうしたんだっけ?」

曖昧な記憶に頭が混乱してくる。と、またドアがノックされ見知った顔が見えた
何故か安堵感が広がるその顔ではあるが、微妙な違和感が付きまとう

「英ちゃん、調子はどうだい?」

「あ・・・伊部さん?あれ???日本に帰ったんじゃ・・・」

そう、目の前にいるのは英二が知ってる伊部さんであってそうじゃない。

(伊部さん・・・少し若返ったような・・・。それに日本に帰ってあっちで仕事してたはずなんじゃ)

「何言ってるんだい、今日、退院して一緒に日本に帰るんだろ?」

「・・・・・。」

「それじゃ、退院の手続きしてくるからその間に着替えもすませちゃうといいよ」

伊部さんは僕が戸惑っているのをどうとったのかすまなそうな顔をしながら病室をあとにした。
閉じられたドアを見つめながら思ったのは僕が何故ココにいるのか
窓の外を見てみると緑の木々がそよ風に揺れ気持ちよさそうな空間を醸し出していた
いままでの生活が夢だったのか、それとも今が夢なのか

「痛っ!!」


自分の頬を思いっきり抓ってみると痛みで涙が出てきた。
痛いには痛いのだが、その他の思いが胸を詰まらせる
もしかしたら・・・
もし、時間が戻って
もし、彼が生きているなら
今度は選択を間違えたくないんだ
いや、どうすることが一番なのかなんて本当はわからない
自分のエゴイスチックな行動が迷惑をかけるかもしれない
だけど、もう後悔する生き方だけはしたくないんだ
生きていることが幸せとは限らない
だけど、これから先どんな苦難が待ち受けていようと僕は・・・
神様、もう一度だけチャンスをください・・・

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2012.10.09 RIU.

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