華蜜恋-カミツレン4



その店の名前は『Green』という。カミツレだけでなくお店の独自のブレンドのハーブティが飲める
店内の日差しが程よく照らす窓辺の席に通されると早速、ケーキセットを頼むことにした
お店自慢のハーブを使ったケーキやクッキー、スコーン、ババロアといろいろある

「俺はロキおすすめのでいいぜ」

「うん。じゃ、グレイはカミツレティとシフォンケーキのセットだね。僕はカミツレティとフェンネルのババロアで」

店員に注文をするとようやく一息つく
お店の中は程よいスッキリとした匂いで満たされておりなんだか清々しい

「なぁ、なんの匂いだろ?」

「ん?お店の?うーん」

鼻を動かし、肺いっぱいに空気を吸い込むと清涼感溢れる空気で満たされる

「あー、ミントと・・・ユーカリ?」

「へ〜、ミントなら聞いたことあんな。あれだろ?チョコミント!」

ビシっと人差し指を突き立てて言うグレイに吹き出す

「あはは、確かに。そうそうチョコミントのミントだね」

「だろー?チョコミントのスーとしたのに似てんな」

「うん。そうだね」

「この店、エルザやルーシィも喜ぶだろうな。帰ったら教えてやるか」

微笑むグレイを嬉しそうに見つめる
そこへ店員がやってきてお茶とケーキを置いていった
グレイの頼んだシフォンケーキにはマルベリーが練りこまれていて幾分か緑色をしている。添えてある生クリームが美味しそうに渦巻いていた
ロキの目の前にはフェンネルのババロアがあり緑色の繊細そうな葉っぱがちょこんとのっている。ババロアのカップの横にあるブルーマロウの花が色を添えている

「へ〜、なんかすげーな」

「何?」

「いや、ロキとじゃなかったらこんな店これねーし」

「そうかな?」

「おう、でも・・・ここってカップルか女同士ばっかじゃね?」

「あはは。そういえばそうかもね」

見回して見るとたしかにカップルか女の子の友達同士ばかりだった。でも、とグレイを見ると気にしてるふうでも無く美味しそうにシフォンケーキを食べていた

「おー、これ甘さもしつこくなくてうめーな」

「うん。食べても太りにくいケーキらしいよ」

「へー。これはルーシィ喜ぶな」

さっきからエルザやルーシィという単語が度々出てくることに幾分か気分が落ちていく気がする
ただ、ピンク色の彼奴の名前が出てこないだけマシかと思うことにしたロキである
カミツレティを口に運ぶとホッとするような気分になった
特に味らしい味は無いがなんとなく安心するのである

「グレイ、お茶の味はわかる?」

「んー」

カップを口に運ぶと味わうように喉に流す

「んーーー。なんだろ。味っていうかまったりするな」

「フフフ。それでいいんだよ。カミツレって繊細な味でさ本当はブレンドして飲むのが一般的なんだよ」

「へ〜。よく知ってんな」

「よし、身体も暖まったし服でも見にいく?」

「そだな」

こんな幸せな時間もあと少しだと思うとだんだん寂しくなってくる

アカリファの街の中を歩きながらそれぞれ欲しいものも買い満足していた

「あ、ロキ、そろそろ列車の時間だぜ?」

「あぁ、もうそんな時間か。僕はこのまま泊まりになってもいいんだけどね」

そんな軽い言葉を冗談と受け止めるグレイは笑っていた

「それにしても一杯買ったなー」

「お互い様。」

二人とも紙袋をいくつも持っていてお互いの姿に笑いあう

「よし、行こうか」

「おう」

そろそろ今日のデートも終わりをつげる時間が近づいてきてしまった
僕は意外と臆病でただグレイとのなんでもない空間が愛しかった

そ・・・それにしても重い・・・
二人していったいどれくらい買ったのか、買い物している間は重さなど気にならなかったのにいざ、帰宅の段になるとその重さが身に染みる
それでも列車に揺られている間はよかった。持たなくてもいいのだから
マグノリアの駅に着くと多少の移動で手に食い込む紙袋がうらめしくなってきてしまった
とにかく、家路に向かう二人の影はゆっくりと街角に伸びていった

「グ・・グレイ。君の家で少し休ませてくれない?」

とにかく少し休みたかっただけだ。間違えの無いように言っておこう。この時点で下心なんてなかったんだ

「おう、いいぜ。ってかマジで荷物大過ぎだな・・・」

「羽目を外し過ぎたね・・・。ここまで買うつもりじゃなかったのに」

グレイの家につき、荷物を放りだすとグレイは自分のベッドへダイブし、僕はソファに疲れ切った身体を横たえた

「マジで疲れた。でも・・・楽しかったな」

グレイはそういって頬杖をついて僕を見て微笑んでいた
って、誘ってるのかい!君は!!
既にいつもの如くパンツ一丁になっている。いや、いつものことなのだが・・・

「グレイ、服!!気を抜くとすぐ脱ぐんだから・・・」

「あ?あぁ、自分ちだし、いいじゃねーか」

「まぁね」

苦笑いをする僕をどう思ったのか、グレイは『そうだ』といいながら自分の持ち物をガサガサと探し出した

「お!有った」

グレイが手にしていたのは小さな紙包み。それを僕に向けて投げてよこした
少し重さのあるそれとグレイを見比べるロキにグレイはニヤリと笑う

「今日のお礼」

「え?」

「もともと、俺が誘ったからな。ありがとな」

思ってもいなかった贈り物にビックリする。

「あ、僕も・・・」

グレイに合うと思って買ったものがあったのだ
カバンの中から取り出した紙袋・・・あれ?グレイからもらったのと一緒だった

「グレイ、僕からも・・・だけど、同じ紙袋だね」

クスリと笑いながらグレイのいるベッドに腰掛けながら手渡す

「マジで?」

「僕からは、グレイに合うかなって思って買っちゃったんだ」

「んじゃ、せいのーで開けようぜ」

瞳をキラキラさせていうグレイは無邪気な子供のようで思わず笑ってしまった

「うん。せーのっ」

ガサリと中を開けてみると・・・ビックリした
何がって、脅かすものが入っていたとかじゃなく
キレイなキーホルダーだった。百合の紋章を施してあり流れるような曲線。何より小さな石がはめ込まれてあった

「ペリドット?」

「ロキ・・・もしかして同じ?」

そう、僕がグレイに買ったのも同じ模様のキーホルダーであり、はめ込まれた石はアイオライトである

「偶然だな。ロキの・・・背中の紋章の色だなって思ってさ。」

「ありがとう。僕もグレイの紋章の色だなってそれにしたんだ」

なんだか照れてしまう。嵌められた石は違うものの同じ形をしたキーホルダーを買っていたなんて。偶然だけどうれしい。
こんな偶然、誰もなんとも思わないだろうけど、僕は違う。

「グレイ、ありがとう。大切にするよ」

「おう、ロキもありがとな」

何つけようかなーと悩む君の横顔を見ながら僕はまったく違う事を考えていた

「ロキ!家の鍵つけたぜ」

そういって見せてきたキーホルダーと鍵と君にニコリと笑う
僕は、どうしても君を振り向かせたくて、鈍感だから僕がこんな事思ってるなんて気付くわけないだろう
何回、キスしても君はわからないんだ
全て悪ふざけで仕舞われてしまう
軽くため息をつく僕を不審に思ったのかグレイが下から覗きこむように心配げな顔をみせてきた

「ロキ?」

君のその顔を忘れたくない。
多分、僕は泣きそうな顔をしていたのかもしれない
グレイは大した抵抗もなく僕に押し倒された
キョトンとした顔をした君も可愛い
両手を拘束した状態のまま唇を寄せる。軽いリップ音がしてグレイが我に返った

「ロキ?」

もう一度、顔を寄せ今度は先ほどより少し長い口づけ

「んっ」

グレイの長い睫がフルフルと震えるのが見えハッとする
目の前の彼は急な展開についていけないのかカラダが震えていたのだ

『あぁ、そんな顔して欲しいわけじゃないんだ』

「ごめん。」

拘束していた手を離してグレイを抱き起す

「僕、グレイの事好きなんだ。でも無理やりな事はしたくない」

そういって優しく抱きしめるとグレイは何かを考えるように俯いた

「わりぃ。俺・・・なんていっていいか。いや、ロキの事嫌いじゃねーし。でも、えっとよくわかんねー」

俯きながら紡ぎだす言葉を聞き漏らすまいと耳を傾ける

「だから・・・「いいよ」」

それ以上は何も言えないのだろう。言葉を被せるとグレイは顔をあげ僕を見てくれた

「グレイ、僕の気持ちに気付いてくれただけでうれしいんだ。今朝より一歩前進だ。今はそれだけでいい。これ以上求めちゃうとキリが無いし、お楽しみはとっておくよ」

「ロキ・・・」

「さて、僕は帰ろうかな」

ロキは立ち上がると持ってきたカバンに器用にキーホルダーをつけると軽く微笑んだ

「あ、グレイ。他の荷物置いておいていい?今日はもう疲れちゃったからまたあとで取りにくるね」

「あ?あぁ、いいぜ」

「キーホルダー、ありがとう。大事にするね」

先は見えないからおもしろいんだ。グレイ、僕は君のことが大好きだよ。

グレイの家をあとにしたロキは公園のベンチに座ると物憂げな表情で枯葉を見つめていた
哀愁漂うその姿は女の子を魅了するらしく、近くを通りかかった女の子はそんな彼の姿をうっとりと見つめていた
しかし、外見に騙されてはいけないのだ
彼の頭の中は・・・

『よし、グレイの家に服は置いてきたからいつでも泊まれるな。あとはいつ落とすかだ・・・』

何かよからぬことを考えているのだから

end.
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いいのか?これでいいのか?
このシリーズはこんな調子でいっちゃうんです
すみません;;
RIU
2012.02.06
2012.05.03再掲載

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