華蜜恋-カミツレン4-
(ロキ→グレイ←ナツ)


明るいオレンジ色の髪をした青年は女の子受けするような美麗な顔をしており、メガネをしている姿はまた理知的に見える
ベンチに腰掛け軽くため息をつき伏し目がちな姿に近くを通りかかった女の子は思わず足を止め見とれるほどだ
しかし、その頭の中で考えていることと言ったら・・・

『グレイを振り向かせる為の作戦』

であるから人は見かけに寄らないのである。もっぱらこの人こそ見かけ倒しという言葉がしっくりくる人は居ないのであろう
兎にも角にも彼の人は、今日こそはと握る右手に力をこめ足を踏み出した

『奥手かつ鈍感な君を気付かせてみせよう!グレイ・フルバスター』

その日のギルドも相変わらず喧噪としており、あちこちで酔っ払いによる怒鳴り声や笑い声はたまた泣き声まで聞こえる始末である
中でも中心となって騒いでいるのはピンク色の頭をした少年、いや少年から青年へと変わりゆく年頃であるナツことナツ・ドラグニル。
その喧嘩相手といえばこの人の右に出るものは居ないであろう。オニキスのような漆黒の瞳を挑戦的に輝かせて殴り合いを買って出るのはグレイことグレイ・フルバスター
もうお気づきかと思われるが、先のオレンジ色の青年が考えていた相手である。
オレンジ色の美麗な彼はと言えば既に喧噪の輪の中であり、今は楽しげに誰とも云わず拳を振り上げている。名前はロキという
もっともロキという名前は此処のギルドメンバーの名前であり、人間という種族で使っていた名前である
本名はレオ。獅子宮のレオ。同じギルドメンバーであるブロンドの可愛い女の子ルーシィ・ハートフィリアの星霊である。
とにかく、このロキはオーナーの許しなく出てこれてしまう規格外の星霊であり、いざと云う時には非常に頼れる存在でもある
ルーシィの星霊になる前からギルドメンバーの一員であるロキ。背中には緑色のギルドエンブレムが輝いているのだ
これこそ、ギルドメンバーの証である。だからと言って勝手に出てこれるのもたまったもんじゃないとルーシィはよく愚痴をこぼしているが本心はどうなのか。
星霊のことを何よりも大事に思っているルーシィであるからこそロキことレオは自由にできるのかもしれない
そのことを考えるとオーナーであるルーシィとレオとの絆は見た目よりも強いのであろう
そんないつもの日常であるギルド内。魔法さえ飛び交わなければギルドマスターであるマカロフも敢えて手を出したりしない
しかし、段々とヒートアップしていく喧噪に誰かしら使いだした魔法に潰されかねない状況になりつつある。

「お前らやめーーーい。」

とうとう、巨人のお出ましだ。
ピタリとやむギルドメンバー達。しょうがないとばかりに、倒れた椅子や机を直し席に着く。そしてまた始まるのは一部の人たちによる酒飲み大会
これまた一部の人たちはリクエストボードの前に立ち仕事を探し出す
そして、オレンジ色の彼と言えば漆黒の彼の前に立ち何か話しかけていた
掻き集めたグレイの衣服を手にもち彼に差し出している

「ね、グレイ。そろそろ行こうかー?」

甘い甘い蕩けそうな笑みをのせて微笑みかける相手はいつもの如くパンツ一丁である。いつもすぐに脱ぐ癖は改めたくてもなかなか治らない
人様に変態と罵られてしまうのは致し方あるまい。なんせすぐ脱ぐから。ギルド内だけにとどまらず、路上でも脱ぐのだから。そりゃ露出狂の変態である。
と、言ってもその癖さえなければイケメンであるのは周知の事実であり、残念なイケメンという異名を持つのも頷けてしまう

「ああ、そうだなー。行くか。」

ロキによって手渡された服を着ながら今日の予定に顔を綻ばせているグレイ。その顔を見ながらこれまたニッコリとしているロキ。
それを横目で見て居たのはグレイのもっぱらの喧嘩の相手でもあるナツ。
不貞腐れた様子の彼は二人の事を睨んでいる。

「グレイ〜〜〜。どこ行くんだよ」

常に喧嘩腰である彼は仲良く身支度をする二人にあからさまな不満声であった

「あ?買いもんだよ。」

「どこに?」

その問いにポカンという表情がお似合いな顔をしているグレイは少しの間をおいているとロキが割って入ってきた

「ナツ、僕とグレイはデートだから邪魔しちゃダメだよ」

思わずロキの顔を凝視するナツとグレイ。

「おいおい、ただシルバアクセの店行くだけじゃねーか」

グレイは笑いながらロキの肩を叩き、そろそろ行こうぜと言いながらその場をあとにする
ロキはそんなグレイにまたまた笑顔を返しながらもナツをチラリと振り返りニヤリとした笑みを浮かべた
そして残されたナツは苦虫をかみつぶしたような顔をして舌打ちしている
微妙な三角関係の三人は今日のところはロキに軍配があがりそうだ

はてさて、二人のデート!?はこのあとどうなるのか

むしろ、グレイに関していえばただの買い物であるという認識であるためにデートとは言えないであろう
もっとも男同志の買い物である。デートという単語はロキの頭の中にしかないのは事実である
マグノリアの駅に向かいながら楽しく談笑しながら歩く二人。目的地は商業都市アカリファにあるため列車で移動するのだ。

「グレイ、服!」

ニッコリと注意する彼にハッとした顔で脱ぎかけた服を着直す

「わりー」

こうもごく自然に脱いでしまう彼はどうしようもない。どうしようも無く好きなのである。ちなみに脱いでしまう彼がではなく彼自身を好きなのだ
程なくしてマグノリアの駅につきアカリファ行きの列車に乗り込む
商業都市であるそこはいろいろなお店があり見て回るだけでもかなり楽しめる。

「ね、グレイ、アカリファに美味しいお茶のお店があるんだ。あとで行こう」

「ん?いいぜ。」

「美味しいカミツレのお茶を出してくれるお店なんだよ」

「へ〜。カミツレってのが何なのかわかんねーけど、ロキが言うんだから美味しいんだろうな」

興味深さげにオニキスのような瞳をキラキラさせている。何にでも好奇心旺盛なのは今も昔も変わらない

「そこのシフォンケーキがまた美味しいんだ」

「さすがロキだな。女の子が好きそうなとこ知ってんな」

軽く冷や汗が流れる思いがする。たしかに女の子が好きそうなチョイスだったかもしれない。と思ったところで遅いのである
そんな容赦ない突っ込みも素敵だよグレイ。

隔して商業都市アカリファに着いた二人はまずはと1点ものを扱うシルバーアクセサリーの店に向かった
店先に並ぶ数々の品にグレイの目が奪われているのは傍からみてもわかる
どれもこれも素晴らしい出来なのである。もちろん、ロキもこういった類のものは好き好んで付ける。
ロキがピアスを見てまわっていると陳列棚の向こう側にグレイの顔が見えた
瞳を輝かせて魅入っている彼を見ると自然と顔が綻んでしまう

「ね、グレイ?いいの見つかった?」

棚の間から顔を覗かせて聞いてみると一瞬驚いた顔を見せてグレイはニヤっと笑った

「あぁ、どれ買うか悩むなー」

「一杯悩むといいよ。お店は逃げないからさ」

ロキはふとレジ近くにあるキーホルダーが並んでいるところを見つめた
一目ぼれだ。コレがいいと独り言を言いながら他の品と一緒にキーホルダーを手にした

先に会計を済ませたロキは店の外に出ていた。冬という季節の今は外にでると少し寒い
思わず身震いしてしまう。

「わりー。待ったか?」

グレイが会計を済ませて出てきた

「ん、全然待ってないよ」

ニコリと笑みで返すとグレイは僕の頬にそっと触った

「つめてー・・・。よし!ロキの言ってたカミツレ?のとこ行こうぜ」

疑問形でいうところがかわいい。というか、グレイが気を使ったくれたのがうれしい。

「ここからそう遠くない場所だから」

歩き出す二人は先ほどの買い物に満足したのか笑みが絶えないのであった

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