華蜜恋-カミツレン3-
(ロキ→グレイ←ナツ)




『ある日突然、アイツが俺の前から消えた

何故?どうして?自分でも気づかなかった思い
居なくなって初めて気付くなんて
なんて滑稽なんだろう・・・
ロキ・・・君が居ないなんて』

「と、言う寸法さっ」

得意満面なオレンジ色の髪をした色男を殴りたい衝動を抑えるのに必死なブロンドの少女
寸前のところで押しとどめているのはオーナーである所以か、彼の儚い胸の内を知っているからなのか

「ロキ・・・そんなの効かないと思うけど?だいたい、グレイがロキの事思ってるように見えないし」

頬杖をついて気の無い返事をしながら机の木目に沿って指をなぞっている。大体、レオいやロキは獅子宮の星霊であり12宮のリーダーでもある。そんな偉そうな肩書を持つコイツが恋に悩む優男なんて

もっとも星霊だとわかる前から優男であったけど・・

「はぁ・・・」

深いため息をつきながらチラリと件の人物を見ると何やらブツブツと呟いている

「振り向かせる前に、僕の良さをもっと示さないとダメか・・・」

普通にしていれば女の子にモテモテであるこの男、何をとち狂ったのか同性である仲間であるグレイを好きだというのだから同じチームを組んでいるルーシィにとってはため息ものでしかない

「ねぇ、ロキ。下手な小細工よりあんたの良さを押し出した方がいいと思うんだけど?」

「・・・・・僕の良さ?」

「うん。あんたのその優しさは老若男女とわず受けるでしょ」

とりあえず至極真っ当な意見を述べながら逃げの態勢をとっているルーシィに気付くことなく物思いに耽る横顔は美男子にしか見えない
いや、むしろ美男子ではあるもののその頭の中身が考えていることが残念でしょうがないのだ
もっとも、いざと云うときには頼りになるのはもちろんだが、こと、グレイに関してしまうとご覧のような有様であってどうにも次元の違う悩みに同調できずにいる
恋バナに縁遠いからというわけでは無い。それだけは無い。絶対に・・・と言い切れないのが悲しいかな。ルーシィはこの日何度目かのため息をつきながら恋に恋する自分を恨めしく思っていた


遠くから見てもすぐに見つけることができるその姿。魔導士ギルド『フェアリーテイル』の仲間たちはカラフルな頭髪の色をしているものが多い中、その人は漆黒の色を持ち落ち着いた印象を受ける。
そして、その隣にいつもいるのがピンク色の頭をしたいかにもバカそうな男。
コイツの紹介をしてもしょうがないので割愛しておく
とにかくも、自分の目的の人物はそれはもう男の目でいうのも何であるが、そのサラサラツヤツヤな髪。キリリとした瞳の奥に宿る寂しげな光。吸い付きたくなるような白い陶磁のような滑らかな肌。程よく引き締まった美麗な筋肉。全てにおいて完璧としか言いようがない

「おい、ロキ。心の中の声がだだ漏れしてっぞ」

「うわっ。マカオか」

突然の隣からの声に思わず飛び上がってしまいながらも溢れる思いを胸のうちに留めることができなかったのかと内心ヒヤリとする

「おめーの気持ちはよーーーく分かった。とにかく当たって砕けてこいやっ」

いやいや、当たるのはいいけど砕けるのだけは勘弁だ

「慎重に行動しないとね」

とにかくオジサマだろうが何だろうがニッコリと優しく笑いかければそれで万事OKである。

「まぁ、精々がんばんな」

マカオはそういって片手にもったアルコールの入ったジョッキを口に運んでいる。今の時分、ちょうどお昼時。仕事に行く気が無いのが丸わかりである。
それにしてもと先ほどの人物に目を走らせてみると、いつものことであるがピンク頭と殴り愛・・・いや、殴り合いの喧嘩を初めている
これもまたいつもの事であるけど、既に上半身裸の彼の人。脱ぎ捨てた服が近くにあるはずだ・・・と見回して見るとギルドの入口付近にポツンと主の居ない服があった。それを拾い上げながら埃を叩き落とす。
なんだか世話女房の気分に浸っていると派手な音がすぐ傍に。何かと見てみると投げられてきたのか元は椅子だと思われるものが壊れて転がっていた
投げてきたのはきっとアイツだ。チラリとそちらを向くとやはりと遠目ではあるがピンク頭と目がぶつかる
喧嘩してるなら集中すればいいのにと内心思っているとやはり、気付くのが遅れたらしく左頬に拳を入れられている。

『ざまーみろ』

心の声で呟きながら何故か空しくなるのはこれまたいつもの事である。
いつまでもこの関係を続けていけるものだろうか?いずれ関係は変わる。それは長い年月に巻かれる人の性ともいえる
だけど、僕は?僕は人とは違う。時間の流れる速さが違うこの世界。僕は置いていかれるんだ。
それは分かっていた筈なのに
こんなにも苦しいなんて思ってもいなかった。この想い、君はわかってくれるかい?
いや、分かって欲しいなんて思わない。君に負い目なんて背負わせたくないから
僕の前では無邪気な笑顔を見せて欲しい。
僕にとっての君の存在って何なんだろう。本当はこんな気持ちに気付かない方がよかったのに。

「おい、ロキどうしたんだ?」

いつも傍で聞いていたい声がこれまた唐突に聞こえてきてビックリして顔を上げると何時の間に喧嘩を切り上げてきたのか大好きな彼が居て優しげな瞳が僕を射抜く
音で表すなら『ズキュンっ(ハート)』って感じだ
僕は何度この必殺技を仕掛けられてきたのだろう。もう数えきれないほどであるのは確かだ。
その度に瀕死の重傷を負う僕の心臓は既に弱り切っている

「グレイ・・・」

僕はよっぽど弱っていたのだろう。心配げに見つめてくる漆黒の瞳が物語っている
グレイはすぐ隣に腰を下ろすと覗きこむように僕を見た

「ロキ?なんか元気ねーぞ?」

「あぁ、ごめんごめん、ちょっと考え事しててさ」

すぐにいつもの笑顔を向けるとやっとグレイも安心したのかニッコリと笑ってくれた
僕の前ではいつまでも笑っていて欲しい。切に願う気持ちに偽りは無い

「そうだ、ロキ!今度買い物付き合ってくれよ」

グレイからの誘い!!何か予定があってもグレイを優先するよ僕は

「うん。いいよ。何か買いたいものあるの?」

「あぁ、新しいシルバーアクセが入ったらしくて一緒に見に行こうぜ」

グレイとは服とか小物の趣味も似通っていて何かと話が合う。それは無理に合わせているものじゃないから一緒に買い物なんてのはふつうに楽しい

「それは楽しみだな。僕も新しいピアスが欲しいし、何時いく?僕はいつでもいいよ」

「そうだなー。明日は仕事入ってっから、今度の週末はどうだ?」

「うん。大丈夫。楽しみだな」

グレイと僕のオーナーであるルーシィは同じチームを組んでいるので予定を合わせやすい。むしろ、予定なんて合って無いような物?
隣でにこやかに話をするグレイを横目で見ながら心が満たされていく。今はコレでいいのかもしれない。

好きな人の笑顔を最後の日まで見て居たいから

end.

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ロキ→グレイは良いです。本当に良いものです
ただ、どうしてもロキが可哀そうな感じになってしまうのはどうしてなのでしょう
幸せになって欲しいです

RIU
2012.01.26
2012.05.03再掲載

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