Afterimage
※文庫本5巻ラストのあたり


初めて会ったときから彼は警戒心の欠片も無く、ただ単純な好奇心だけで俺に語りかけてきた
たどたどしい下手くそな英語で話す。平和ボケな日本人
だけど、そんな彼に興味を持ったのは確かだった
どうして、興味を持ったのだろうか。
あれから・・・長いようで短い。傍に居るのが当たり前のようになり、何よりその存在が安らぎを与えてくれていた
欠けていたピースが一つづつ埋められていくようだったんだ
でも、ココに居てはいけない
アイツは安全な所に戻る必要がある
人を殺めることに何の躊躇も無い俺を移す瞳が
その柔和な顔にある漆黒の瞳が何もかも飲み込むように俺を見つめる
あの瞳に俺は一体、どういう風に映っているのか

(そんな目で見るな・・・)

いつの間にか真っ赤な返り血を浴びたナイフを握っていた
その真紅の中にショーターの残像が浮かび上がる

(そんな目で俺を見ないでくれ)

ショーター・・・親友までもこの手で殺めてしまった
肉を切り裂く感覚に生暖かい真っ赤な鮮血が身体中に広がる
ショーター・・・あぁ・・・何故・・・
紅い・・・黒く塗りつぶされたキャンバスに紅い色が散りばめられている
それは次第に人のカタチになり見知った形に変わっていった

(オレは・・・)



「患者が・・・」

「ん?」

「泣いています。涙が・・・」



「英・・・」


・・・それでも俺は・・・お前を求めてしまう





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2012.08.23 RIU.
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