プロローグ 時空の歪みの果て




何も見えない 闇

辺りを見渡しても 暗く 深い 暗黒が広がるだけの 世界

私たちは逃げ続けていました  私たちの命を狙う者たちから…

激しい轟音のなる中 私は兄の手に引っ張られながら

ただ ひたすらに暗闇の世界を走り続けていたのです。

身体の小さな私たちはすぐに疲労がたまり  呼吸をすることが苦しいまでになりながらも

走り続けていたのです…

当てのない逃避行を続けていましたが

突然 兄が私の手を離し 私は 兄の魔法の力で作られた白い球体の中に入れられたのです。

「ゼルファー!何をするのです!?」

私は兄の名を呼びます 何度も 何度も...

「リター...どうやらこれしか方法は無いようだ。お前は逃げろ。」
「いけません!ゼルファー、どうかあなたも一緒に」

兄は私の言葉を聞こうともしませんでした。

「私の...その魔法でお前を安全なる地へ...このまま逃げていてもいずれは私たちも【汚染】される。ならば......」

兄は  私に小さく耳打ちをした後 魔法を発動させました。

「ゼルファー!ゼルファー!!」

視界がどんどんぼやけていく...

そして 真っ白になり.............



ーあれから ひと月ー



私は ある街の中に小さなアジトを作り そこで隠れるようにひっそりと暮らしています。

私の命を狙う者たちの手から 逃げていることは変わらずに...

私は三つのホムンクルスを作り出しました。

一つは【人】型 二つは白と黒の【ウサギ】のような形の

兄との【約束】の為に

「リター、どうしたの?」

人型のホムンクルス ナナフィーが私に声をかけてきます。

「ごめんなさい、ゼルファーとの約束を思い出していました。」

私は腰掛けていた木製のいすからゆっくりと立ち上がりました。

でも......

あの日以来 すっかり弱り切ってしまった私の体は、重力に逆らうことが出来ず引っ張られるように床に倒れ込んでしまったのです。

「リター!?無理しないで!!」

すぐにナナフィーが私を抱き上げ、いすに腰掛けさせる...

「私には成すべきことが...だから外に」
「駄目よそんな体で、外に出たら【奴ら】に見つかるでしょうが!」
....................

私が弱まっているということは、兄の汚染が悪化しているということ?このまま何もしない訳には...

「今こそ、ゼルファーとの約束を果たすときです!ナナフィー、そこの箱を。」

私は彼女に、木製の丸い机の上にいつも置いておいた白の四角い箱を持ってこさせました。

「何なのこれ?」

その箱の中身はとても大事なもの

時がくるまで誰にも開かせていないもの

それがようやく【その時】を向かえて 開かれる

「開けてください、ナナフィー」

ナナフィーは私の言葉に応え、箱の蓋を開く。

中には...銀製の色の違う指輪が三つ。

「指輪?リター...本当にこれがゼルファーとの約束の品なの?」

私は指輪を取り出して、室内の隅で眠っている二匹のホムンクルスに呼びかけました。

「ネル ラル あなたたちに大事な役割があります。」

二匹は目を覚まして私のもとにやってきました。

「おうおう!なぁーんぞこの指輪?まさかこれがリターの命運をかけるものだっていわねーだろな?」
「みたところ...普通の指輪ですの〜」

...この指輪はネルの言う通り、私の命運をかける大きなものなのです。

「ナナフィー ネル ラル これは紛れも無いゼルファーとの約束の品、私の命運をかけた指輪です。
これは、ただの指輪なんかではありません。
莫大な魔力を秘めた...指輪戦士(リングナイト)の変身リングなのです!」

「ちょっとリター!?まさか本当にリングナイト・システムを起動させちゃったの!?」
「すごいですのー!指輪戦士は最高の戦闘能力を持った戦士ですのー!!」

唖然とするナナフィー 喜び合うネルとラル

私は、手に持っていた三つの指輪を二匹に託して...

「お願いします。まずは一人目の指輪戦士を見つけて私のもとへ連れてきてください。時間がないのです...」

二匹は指輪を大事そうに懐にしまい込む。

それを私は確認して...


「さあ、お行きなさい!」


その言葉が合図となって、二匹はこのアジトから外へ出て行きました。


私は 三つの指輪にすべてを託して...........


「頼みましたよ、ネル ラル」



ゼルファー あの時耳打ちで交わした約束


必ず   成してみせます




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