第5話 1/3
人里離れた山奥。
そこには2人の人間が住んでいた。
「また残して。きちんと全部食べてください。」
「嫌じゃ。」
皿に残っている食べ物を食べさせようとする人と、食べないと駄々をこねる人。
怪盗仁王とそのパートナー、柳生だった。
怪盗仁王に分身がいるとは柳生のことだった。
「あなたは食が偏り過ぎなんです。もっときちんと食べないといつか痛い目にあいますよ。」
「俺は少食なんだ。もういらん。」
「食べようとすればまだ食べられるはずです。1日の栄養を考えて食事を作っているんですから食べてください。」
全部食べるまで席を立たないでくださいと柳生は言った。
この会話を見て、誰がこの2人を怪盗だと思うだろうか。
「はぁ。仕方ない。」
仁王は皿の上の物を少しずつ減らしていく。
最後のにんじんを食べ、きれいに口元を拭いてから口を開く。
「ごちそうさん。…柳生、洗い物が終わり次第、仕事部屋に来てくれ。」
「また暇つぶしにボードゲームですか?」
「…真面目な話ぜよ。」
仁王は苦笑いをしながら、奥の部屋に消えて行った。
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