幸せの道第8話4/4
ピーンポーン。
この家に来るのは久しぶりだ。
昔はよく来ていたのに。
「はい、どちら様ですか。」
変わらない彼の習慣。
『友紀です。』
変わらない私の返答。
「友紀!」
ガチャ。
私よりだいぶ早く帰っていたのか、着替えてあった。
『今、大丈夫?』
「あぁ、入るか?」
『お邪魔します。』
久しぶりに入る日吉家に緊張しながら入った。
『おばさんとおじさんは?』
「まだ帰ってきていない。」
リビングのソファに座ると若くんは麦茶を持ってきてくれた。
『ありがとう。』
私はそれを一口もらって、返事をしにきたとつぶやいた。
「もう決まったのか?」
『うん。待ってもらってるんだから、なるべく早く返事したかったんだ。』
「待て。」
『え?』
「俺はまだきちんとお前に気持ちを伝えていない。返事を言うまえに俺の気持ちを聞いてほしい。」
『うん。』
「俺は昔からお前がいることが当たり前だった。お前が頼ってくることは変わらないものだと思っていた。だから気づかなかった。いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。」
私が思っていたことと同じことを言った。
当たり前だと思っていた。
気づかないふりをしていた。
「お前を忍足さんにとられて…後悔しかなかった。2人を見る度、どうすることも出来ない自分を悔やんだ。…今ならはっきりと言える。」
若くんは一度グッと唇を噛んで、口を開いた。
「俺は友紀が好きだ。これからも一緒にいてほしい。…俺と付き合って、ほしい。」
そう言う若くんの顔は少し赤くなっていた。
でも、それ以上に私の顔は赤いと思う。
若くんが私に告白なんて一生ないと思っていたから。
『ありがとう。私、とっても嬉しいよ。』
若くんは照れているのか、うつむいてしまった。
「返事を聞かせてほしい。」
『うん。』
そうだ、私はこれを言うために。
自分で考えた道を伝えるために。
ここに来たんだ。
例え、うまく言葉にならなくても。
私の気持ちを受け取ってほしい。
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