幸せの道第7話5/5
「日吉。」
日吉は何も返事はせずにただ忍足のほうに目を向けた。
「俺たちはとある条件で付き合ってたんや。」
「…とある条件?」
「友紀が日吉に頼らないようにしたい。せやから俺は協力してた。」
「いや、友紀はあんたが好きで…」
「ちゃう。付き合うことを提案したんは俺や。友紀やない。」
「そんな、なぜ。」
「まだわからんのか?友紀は自分を解放したくて身を引いたんや。自分の幸せを犠牲にして。」
日吉はなんでと呟いて驚く。
「邪魔してるのは俺や。最初からわかっていたんに、黙ってたんは俺のためやった。」
忍足は泣いている友紀に笑って言う。
「友紀から言ってほしい。最後の一言。もうどうすればええかわかるやろ?」
『私、からは、い、えません。』
「俺から言いたくあらへん。最後のお願いや。」
友紀はグッと泣くまいと耐えて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
『…侑士さん、ごめんなさい、別れて…もらえますか…?』
「おおきに。」
忍足は友紀の頭を撫でて公園を出て行く。
「忍足さん!」
「もう用はあらへん。あとは頑張りや。」
「あなたは本当は…」
日吉はその言葉の続きを飲み込んだ。
「心配せんでええで、日吉。ファーストキスは奪ってへんから。」
忍足はそう言って、手を降って公園を出て行った。
「ありがとう、ございます…」
残された2人はしばらくの間、黙ってブランコに座っていた。
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