幸せの道第6話1/5
ミーンミーン……
蝉の声がどこからか聞こえてきた。
まるでもうすぐ夏だと教えてくれているようだった。
ミーンミーン……
いつもうるさいと思う蝉の声も、心に余裕があると風流だと思うのだろうか。
今の俺にとってはうるさいものだった。
「おい、侑士。お前最近ボーっとしてること多くね?」
岳人がしかめっつらしながら言ってきた。
同じことを友紀にも聞かれたなと思い、ため息をつく。
「あぁ、らしいな。友紀にも言われたわ。」
「友紀って彼女のことだろ?そんなにボーっとしてんのか?」
もっともなことを岳人に言われて言葉が返せなかった。
「もしかして何か悩みでもあるのか?」
「…まあ。」
「やっぱり!他に好きなやつができたとかか!」
即座に俺は岳人にでこぴんをする。
「ひどいやん。俺そんな情けないやつちゃうで。」
「いって。いや、お前ならありえなくないだろ。けっこう女かえてそうだし。…いてっ。」
もう一発でこぴんをくらわせてやった。
「自分が噂信じてどないすんねん。そんなことないのわかってるんやろ?」
「ちょっとからかっただけじゃんか。じゃあ何?侑士の悩みって。言ってミソ?」
誰かに話したかったモヤモヤを吐き出すことにした。
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