幸せの道第5話3/5
「なぁ日吉、どないしたん?」
日吉は一周走り終えて、戻ろうとすると、門のところで忍足が待っていた。
「…忍足さんには関係ありません。」
『ほんまか?若干間があいたで?』
変なところに鋭い忍足に、日吉は心の中で舌打ちをする。
「走って疲れ」
「友紀と昨日、出かけたんやないん?」
日吉は驚いた。
「何故知ってるんです?」
友紀はわざわざ言うことはないと思っていた。
「半分ハッタリやったんやけど。ほんまやったんや。友紀がなんとなく言いにくそうにしとったし、日吉は変やし。もしかしたらくらいの気持ちやった。」
忍足は無表情のまま、続けた。
「友紀が誘ったのか知らんけど」
「違います。」
日吉は忍足の言葉を遮って、はっきりと答えた。
「あいつが誘ったわけじゃありません。俺がたまたま聞いて、行きたいって言ったんです。」
「ふーん、そんなんは別に気にしてへんけど。」
忍足の表情が冷笑に変わる。
「出かけただけで様子が変わったりせぇへんやろ?何があったんや。」
「何も。ただ。」
日吉はコートに向かって歩き出した。
「取り返しがつかないと、そう思っただけですよ。」
そのまま日吉はコートに走って行った。
忍足はしばらく無言でその場に立っていた。
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