出会いは桜の木の下で/幸村 7/9
「ついて行ったほうがいいかな。」
「そんなにこの病室から受け付けは遠くないから大丈夫だよ。」
「そ、そうだね。」
「君は覚えているかな。俺たちの出会い。」
いきなり話が変わって米紅は少し驚いた。
「伊弓のところに遊びにいったときのこと?」
「違うよ。俺たちは伊弓に出会う前から出会っていたんだよ。」
「え?そうだっけ…」
「入学式の直前桜を見上げている女の子がいたんだ。俺は思わず声をかけた。」
「桜…あの時の男の子って幸村様?」
言われるまで忘れていた。あの日のこと。
「そしてそのあと、伊弓を通して仲良くなった。色々あったね。」
この思い出話になんの意味があるのか、米紅にはわからなかった。
「気づかなかったんだ。それが当たり前で。入院してわかった。」
黙って米紅は聞いていた。
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