「寒いなあ…」 やけに綺麗な空を見上げそう呟くと比例してふわわっと白い息が宙に舞う 手袋を忘れてしまったもんだから手先が冷たくてしょうがない 「ごめん、待ったよな…思いのほかサークルの話し合いが延びちゃって…」 玉緒先輩がはあはあと白い息を吐きながら門から出てきた。その時点で寒さなんてぶっ飛んでしまう。 「大丈夫ですよ。先輩こそお疲れ様です。」 「ああ、本当にごめんね。…あれ?手袋は?」 玉緒先輩が少し赤くなった私の手をみて首を傾げた 「あ…えと忘れちゃって…」 へらっと笑ってみせると玉緒先輩はため息をついた。 そして私の両手をとり、はああー、と私の赤い手に息を吹きかける。 「大丈夫じゃないじゃないか…こんなに冷たくなってる。」 「え、や、あの…えと」 「どうしたの?」 「暖かいし、すごく嬉しいんですけど…その」 「…?」 「場所を選んでいただきたい…です…っ」 此処は大学の校門 下校時間の為人が次々校門を背にして家路に急いでいる つまり、すごく目立つのだ。
慌てて玉緒先輩は私の手を離して、ごめん。と恥ずかしそうに俯く。それからはっ、と何かに気がついたように再び私の手を取った。 「…その…じゃあ手を繋いで帰ろうか」 「あ…はいっ!」
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