序章
竹谷四葉Side


大阪の四天宝寺に転入して、早1ヵ月。
街にも、人間にも、校則にも、随分慣れてきたんじゃないだろうか。

ただ、引っかかることが1つある。
それは、この学校でアイドルのように崇拝されている”男子テニス部”のことだ。
いや、細かく言ってしまえば、その男子テニス部に所属する”千歳千里”という男子のこと。
私は千歳千里と同じクラスになったわけだが、彼の姿を数回しか見たことがない。
そんなに出席率が低くて教師に何も言われないのだろうか。もしかして、もう学校を中退しているのだろうか。



「竹谷さん! これ、うちの下駄箱ん中入っとったんやけど!」



あと10分程で朝のHRが始まるという時に、クラスメイトの女の子が、何やら慌てた様子で私のところに来た。
まずは「おはよう」と挨拶すると、「それどころやないって!」と言われてしまう。
彼女は走って来たのか、乱れた息を整えながら、私に1枚の紙を差し出す。
2つに折りたたまれた紙は、ここからでは何が書いてあるか分からない。



「堪忍、うちのや思って中見てしもうた」



乱れた髪を整えながら言う彼女から、差し出された紙を受け取る。
とりあえず中を見てみないと話が進まないと思い、折られた紙を開く。

竹谷四葉へ。放課後、校舎裏で待つ。

たったそれだけが書かれていた。なにこれ。
もしかして告白? なんて思ってしまったけど、告白する側の言い方じゃないよなあ。
となると、果たし状? もしくは、いじめのターゲットにでもされたかな?



「あ、あんな、これ、行かんほうがええで? もしかしたら集団リンチとか……」



私のことを心配してくれているのだろう。彼女はおどおどしている。
いじめとか集団リンチとかだったら嫌だけど、もし本当にそうなのだとしたら、早いうちにどうにかしないと。
こういうのを放っておくと、ずっと続くだろうし、そうなれば面倒なことになりそう。
何が起きるかは分からないけど、とりあえず行かないと。
しかし、”行く”と言えば、今目の前にいる彼女に心配をかけそうだ。



「うん、行くつもりないよ」



そう言うと、安心した表情を見せた。良い子だなあ。
そういえば、どうして私宛ての手紙が彼女の下駄箱に入ってたんだろう?

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