序章
久々知明Side


「思いついた! 久々知明と竹谷四葉を四天宝寺に転入させる!」


なんて、学園長先生の思いつきで、強制的に四天宝寺という高校に転入させられた。
一応、期限は3ヵ月と決まったが、異例の思いつきを全校生徒、教師で反対したのは記憶に新しい。まあ、結果は覆らなかったけど。

大阪にある四天宝寺は、”お笑い”に熱が入っていて、何かとボケやツッコミを求められる。
最初は正直戸惑った。というか今でも戸惑ってるんだけど、やらなきゃ解放してくれないから、やるしかない。

そして、この学校には”男子テニス部”があるのだが、この部活に所属している生徒達が、とにかく顔が良いからとアイドルのような扱いをされている。
で、私のクラスは3年2組。このクラスには、噂のテニス部に所属する生徒が2人いる。
それが、白石蔵ノ介と忍足謙也という2人。



「突然堪忍な。その、マネージャーやってほしいんやけど……」
「まあ強制やけどな!」



その2人に、そんなことを言われてしまって、私がクラスの注目を浴びてしまっている。
なんで? どうして? という疑問で頭が埋め尽くされてしまった。
私は一応、メインで演劇部、サブで陸上部に所属したから、今更部活を変えることはできない。
それなのに、どうして転入して1ヵ月が経った今、そんなことを言ってくるのだろうか。
ていうか、え?



「強制? ってどういうこと?」



本気で意味分からん。
私の問いに、白石蔵ノ介は苦笑し、忍足謙也はニンマリと笑みを浮かべた。



「実は、大川学園からテニス部宛てにこれが届いたんや」



白石蔵ノ介のその言葉だけで、何故か嫌な予感がする。
差し出された紙を受け取り、恐る恐る内容を読むと、そこには衝撃的なことが書いてあった。

学園長からの突然の思いつき! 久々知明、竹谷四葉は、男子テニス部の合宿にマネージャーとして参加すること!

思わず、グシャ、と紙を握りつぶしてしまった。
忍足謙也が「あっ」と声を上げたが、そんなことは知ったこっちゃない。
あんの学園長! 転入だけじゃ飽き足らず、転入先でもこんな変な思いつきしやがって!



「……ちょっと学園長に電話してくる」



怒りが顔に出てしまったのか、白石蔵ノ介も忍足謙也も、ついでにクラスメイト達も青ざめた。
いかんいかん、感情をあからさまに表に出してしまっては忍者失格だ。……いや、今はいいか。
とにかく学園長先生に抗議すべく、ポケットからスマホを取り出し、近くの女子トイレに直行した。

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