合宿
07 白石Side


切原君からの嫌がらせ。
竹谷さんはなんでもないような表情で、なんでもないように切原君をあしらった。
颯爽と走り去って行く竹谷さんの背中を見て、次に切原君に視線を向ける。
切原君は、竹谷さんの言動が意外だったのか、口をポカンと開けながら竹谷さんの背中を見ている。

自分達四天宝寺は、女子と仲良くやっているけど、他校の男子テニス部は青学を除き、女子を嫌っている。
迂闊だった。合宿が合同であると知ってからでも、竹谷さんと久々知さんに彼等のことを言っておくべきだった。



「こら、赤也。まだ彼女が何かをしたわけじゃないだろう」



背後からかけられた言葉に、切原君はビクッと肩を震わせる。そして、後ろを振り返って「部長……」と呟いた。
切原君の後ろに居るのは、切原君が通っている立海大付属高校の部長である幸村精市君。余談やけど、俺と幸村君は仲良し。
だけど幸村君だけではなく、参謀と呼ばれている柳蓮二君も居る。
ちゅーか幸村君、”まだ”ってなんや、”まだ”って。



「で、でも、女子なんていらないでしょう!?」



幸村君にこっぴどく叱られると思っているのか、切原君は焦りながらも言う。
意外にも「そうだけど」と切原君の言葉に同意しながらも、幸村君は苦笑した。
幸村君の言動に、切原君はホッとしたのか安堵の笑みを浮かべる。

うーん、なんやろなあ。モヤモヤするわ。
大川学園のこと、言うてしまおうか。そうすれば、幸村君達が誤解しとるって分かってもらえる。
せやけど、竹谷さんと久々知さんの許可なく、大川学園のことを言ってしまってええんやろうか。
1週間だけの合宿やし、竹谷さんと久々知さんが知られたくないのであれば、言わん方が――



「大川学園ってなんのことっスか?」
「白石、さっきから声に出てるよ」



アカーン! バレてもうたわー!
切原君と幸村君が首を傾げながら俺を見ている。柳君は……、うん、しっかりノートとペン持っとるわ。
「あ、あはは、なんのことやろなあ?」と誤魔化してみたけれど、幸村君にジト目で見られてしまった。や、やっぱ誤魔化せへんか。



「白石が大川学園と繋がりを持っているとはな」



え?
興味深そうに言う柳君に首を傾げる。大川学園って有名なん?
きょとんとする俺を見て、何かを察したのか「なんだ、知らないのか」と柳君が言った。
そして、大川学園について、俺が知らないことを教えてくれた。

柳君曰く。
大川学園は兵庫県にある学校だ。小中高と一貫らしい。生徒の数が少なく、校舎は一緒だ。
部活動は無いが、委員会活動はあるようで、教師や生徒の仲は非常に良い。
……ここまでは、至って普通の学校に思える。
だが、木々を走りながら渡っているところを目撃されたり、屋根の上を走っているところを目撃されたり、実態は謎に包まれている。
故に、大川学園を知る者は、大川学園のことを”スパイを育成する学校”だと見解している。



「スパイって、そんなまさか」



おかしそうに笑う切原君。

……思い当たる節は、ある。
小春とユウジから聞いた話だと、ひったくり犯を捕まえた時、竹谷さんは川の欄干の上を、久々知さんは看板の上を走っていたらしい。
金ちゃんが”まるで忍者だ”と騒いでいたけど、……あながち間違いではないのかも?

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