合宿
06 四葉Side


グラウンドに集まってから、今日の日程を軽く聞いて、まずは練習試合が始まった。
明はボールの準備に、桜乃ちゃんはスコア表の準備に、朋ちゃんは堀尾君達とドリンクを作りに行った。
私は試合の後に渡すタオルを取りに行く途中だった。だけど、誰かが私の行き先を遮った。



「あのー、邪魔だから退いてくれませんかー?」



そんなことを言われ、なんで?、と素直に疑問に思った。
邪魔って言われても、私が行った先に彼が居たわけじゃないし、むしろ私の前に出てきたのは彼なのに。
普通に歩いてただけで邪魔扱いされるって、そんなことある?
この頭くるくるパーマの男の子は、私を小馬鹿にするかのように笑みを浮かべながら、私を見下ろしている。え、何?



「ごめんね。すぐ退くよ」



すっ、と横に逸れて、彼の横を通り抜けようとしたが、またもや前に移動されて進行を邪魔される。ん?
わざわざ私の前に立ちはだかるって、この子暇なの?



「男だらけのところにわざわざ行くって、男好きも大概にしねえと嫌われるぜ?」



……ああ、そういうこと。
この合宿に参加した男子テニス部の部員達は、綺麗だったり男前だったり、顔が整ってるなあ、とは思ってた。
千歳君や白石君達もキャーキャー言われてたし、彼等も学校で同じ扱いなのかもしれない、と予想はしていた。
でも四天宝寺の人達は白石君達をアイドルのように扱いながらも、実際に接する時には普通に接している。
だけど、この子は少し状況が違うらしい。なんとなく察した。
害虫を踏み潰したような表情を浮かべる彼は、一刻も早く、私にこの合宿から消えてもらいたいようだ。
この様子じゃ、私だけじゃなくて、明や桜乃ちゃん、朋ちゃんにも同じ気持ちなんだろうな。



「切原君! 何言うとるん!?」



会話を聞いていたのだろうか、白石君が慌てた様子でこちらに走ってきた。
周りの人達が、なんだなんだ、と好奇の目で私とくるくるパーマの彼を見る。
あ、ヤバイ、このままだと大騒ぎになるのでは? そうなると私、気まずい状態で合宿を過ごさなきゃいけなくなる。それは阻止せねば。



「じゃあお互い話しかけないようにしよう。解決。じゃ!」



”きりはらくん”と呼ばれた彼と白石君が何かを言う前に、私は走り出した。
こうやって逃げるの超得意。

彼はきっと、女の子からキャーキャー言われすぎて、女の子が鬱陶しくなってしまったんだろう。
男の輪に居る私達のことも、取り入ろうとする彼女達と同じだと思い込み、排除しようとしている。
まあ私はモテないし、彼の気持ちは正直分からないけど、関わらないほうが良いのは分かる。
あ、でも白石君達と話しただけで理不尽ないちゃもんつけられたらどうしよう。また逃げるか。

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