25

目を開けると、屯所の天井が目に入った。
腹部がズキズキと痛む。刺された所をそっ、と触ってみると包帯の感触がした。誰かが、手当てをしてくれたみたいだ。自分は、どのくらい寝ていたのだろうか。なんだか、ずっと、暗闇の中に居た気がする。……そにしても、先程から体が全然動かない。金縛り……、にしても意識はちゃんとしてるし首も動くし。なんだろう……、凄く不安だ。もしかして私……、このまま死ぬんじゃ……。



――スッ



誰かが部屋に入ってきた。私はゆっくりと、その入ってきた人物に顔を向ける。「ヒノエ?」と入ってきた人物の名前を呼ぶが、ずっと寝ていたなのか、声が枯れていて弱々しい。ヒノエは起きている私に驚きつつも、泣きそうな顔になった。「伊織っ……」と辛そうな顔で涙を少し流すヒノエ。



「ごめん、ごめんよッ……! あたしが、ちゃんとしていれば……!」



決して私に近づこうとしない。近づいてはいけない、そう思っているのだろうか。ヒノエは障子に背を預けながら手で顔を隠し、泣きながら嘆いた。もしかして、あの時私を守れなかったことを悔やいているのだろうか。……そんな……、ヒノエが泣くことないのに……。



「――…ヒノエ、おいで」



泣くヒノエに、私は寝ながらも手を差し伸べた。ヒノエは私の差し出した手を見るけれど、首を横に振る。「お願い」と私が優しく言うと、ヒノエはおずおずと私の横に座った。ヒノエの冷たい手が、私の手を包む。私が、ヒノエを恨むはずがない。いつも、こんなに助けてもらっているのに。



「一緒に居てくれるだけで、私は充分だよ」



私がそう言うと、ヒノエは涙を流しながら何度も頷いた。



「皆は、どうしてる?」
「いつも通りに過ごしてるよ。けど、やっぱり元気がないね」
「そう。三篠は、怪我してない? あの妖と戦ったんでしょ?」
「ああ、むしろピンピンしてるよ」
「ふふ、そっかそっか」



ヒノエの言葉に、私は思わずクスッと笑ってしまった。ヒノエもつられて笑っている。良かった、やっと笑ってくれた。私は秘かにホッとした。その時、突如として睡魔が私を襲った。その睡魔に勝つことは出来ず、私はそのまま、眠りについてしまった。なんだろう……、よく分からないけれど、私はなんだか、このまま起きれないような気がした。



「伊織? ……ああ、寝ちまったのかい。次起きるのは、いつだろうねえ」



伊織の予感は的中し、その日の数日後、伊織は死んだのだと判明した。


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