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――あれから、五年が経った。



「可愛いわ、伊織ちゃん!!」
「ああ、とても良く似合っている」



今日は結婚式。誰の、っていったら恥ずかしいけど、私と貴志の。ウェディングドレスを着て、塔子さんと滋さんの前に立つ。恥ずかしくて、きっと私の頬は赤い。けど、こんなにも二人が喜んでいるのを見ると、どうしても頬が緩む。



「私、とても幸せ者です。塔子さんや滋さんに会えて、貴志と結婚できて……」



嬉しすぎて、涙が出てきてしまう。だが、せっかく化粧をしたのに崩すのは嫌だ。グッ、と堪える。



「私も幸せよ、伊織ちゃん」
「貴志と幸せにな」
「はいっ!!」



その後、塔子さんは結婚式会場の席に座るため行ってしまった。私と滋さんは、会場の扉の前で準備をしている。遂に、「新婦、入場」と言う言葉と共に、扉が開かれた。私と滋さんは少しずつ、レッドカーペッドを歩いて行く。向こうで、貴志が此方を見て顔を赤らめているのが見える。……恥ずかしい……。それに、貴志、かっこいい。こっちまで顔が赤くなってしまう。貴志の隣まで行くと、滋さんが塔子さんが座っている隣へと行って座った。それを確認すると、聖職者の人が分厚い本を開いた。



「汝、夏目貴志は、この女橘伊織を妻とし、良き時も悪い時も、富める時も貧しい時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添う事を、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」
「誓います」

「汝、橘伊織は、この男夏目貴志を夫とし、良き時も悪い時も、富める時も貧しい時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添う事を、神聖なる婚姻の契約の元に、誓いますか?」
「誓います」



「では、誓いのキスを」と言う聖職者の言葉に、私と貴志は向き合う。私も貴志も、顔が赤い。「い、いくぞ?」と言う言葉に「うん」と返事をし、私は静かに目を閉じる。そして、唇に温かいものが当たった。その温かみに、顔が更に熱くなるのを感じる。しばらくすると、その温かみが無くなった。と同時に、私は目を開く。そこには、顔を真っ赤にさせた貴志が私から目線を逸らして立っていた。そのことに、思わず笑ってしまう。



「ふふっ」
「わ、笑うなよ……」




 ***




結婚式は順調に進み、最後の披露になった。貴志の腕に自分の腕を絡め、出口へと歩いて行く。門が開かれると、結婚式に来てくれた皆が私達の通る道を開けて並んでいた。



「おーい!伊織ー!!」
「綺麗だぜー!!」
「そこらじゅうの女の子より可愛いよー」



笑顔で大きく手を振る龍と平助さん。私は笑顔で、小さく二人に手を振り返した。そして、沖田さんの言葉にはスルーだ。階段をおりて、皆の間を通って行く。新選組の人達、龍の部活仲間の人達、貴志の友達、とにかくたくさん来てくれた。



「まさか貴様が結婚するとはな」
「風間さんも来てくれたんですか!!?」
「千鶴に呼ばれてな。不本意だが、来てやったぞ」
「ふふ、有難う御座います」



私が微笑むと、風間さんは「そこは怒るところだろう」と眉間に皺を寄せた。でも、風間さんはなんだかんだ言って優しいと知ってしまったし、これも彼の優しさなのだと気づいてしまった。



「次は千鶴ちゃんと土方さんの番だね」
「なっ……!!」
「ああ、そうだな」
「と、歳三さん!!」



赤くなる千鶴ちゃんを、面白そうにからかう土方さん。本当に仲良いなあ。微笑ましそうに見ていると、千鶴ちゃんに「つ、次行かないと!! ね!!」と背中を押されてしまった。ふふ、照れ屋なんだから。



「夏目、おめでとう」
「ああ、ありがとう、田沼」
「良いなあ、夏目君。こんなに可愛いお嫁さん貰っちゃうなんて……!!」



透ちゃんの言葉に、私は照れながらも嬉しくて笑みを浮かべる。貴志は貴志で微笑みながら「だろう?」と返事をしている。もう、調子に乗っちゃって。



「きゃーっ!! 伊織可愛いよーっ!!」
「落ち着けヒノエ」
「伊織のことになるとやかましい奴め」



気分が上がっているヒノエに、そんなヒノエを見て呆れている三篠、猫姿のニャンコ先生。普通の人達にヒノエと三篠のことは見えないけれど、妖を見ることができる私と貴志は思わず苦笑する。でも、そんなに喜んでくれていると、私も嬉しい。



「――伊織、俺と出会ってくれてありがとう」
「え?」



その言葉に思わず吃驚してしまった。貴志の顔を見ると、私に微笑みかけてくれていた。……駄目だよ、貴志。それ、私の台詞だよ。ぎゅっ、と貴志の腕に抱きつく私。貴志は吃驚したのか「伊織……?」と顔を赤らめた。私、好きなんだよ。貴志の全部が、好きなんだ。
今日から私は、夏目伊織です。


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