◆其の十三

久々知君にデートに誘われて数日が経ちました。
あれ以来、私は久々知君の顔を見るとすぐ顔が赤くなってしまい、見守ることが出来ずにいます。
こんなに久々知君の顔を見ていないのは久しぶりで、ちょっと戸惑っています。
しかし、見に行けば私の心臓が激しく鳴って死にそう。



「私どうすれば良いの!?」
「尾浜君ストーカーしに行ってきまーす」
「八坂ァァアアア!」



私を簡単に見捨てる八坂の足を、ガシッ、と掴む。
八坂は足が動かせなくなり「ぐはっ!」と前方に倒れこんだ。ざまーみろ。
「何すんの……」と涙目になりながら私を睨む八坂。
いや、八坂が私を見捨てようとするから……。



「良いじゃん、見なくたって。もうすぐ久々知君とデートでしょ? 羨ましいこった」
「何もかもが急展開でどうしたら良いか分からない」
「寝てろ」



八坂は私の頭を、バシッ、と叩くとスタスタと歩き始めた。
「えっ、ちょ、」と動揺しながら八坂に手を伸ばすけれど、それは空ぶってしまった。
「何処行くのーっ!」と叫ぶと、どんどん行ってしまう八坂が「厠じゃボケ」と返事を返してくれた。
厠ならすぐに戻ってくるか。



「ちかせんぱーい」
「むむ、その声はユキちゃん」



廊下から声を掛けられ、視線を向けると、ユキちゃんがニコニコ笑みを浮かべながら立っていた。
だけど、なんだかいつもより大人びている気が……。
いや、大人びているというよりも、……身長が高くなったというべきか……。
とりあえず「どうした?」と聞くと、ユキちゃんは「えへへ」と誤魔化す。



「ちか先輩、ちょっと一緒に来てくれませんか?」
「何? 先輩をリンチ?」
「そんなことしませんよぉ」



なんだ? 今日のユキちゃんはやけにぶりっ子だな。
キョトンとしている間に、ユキちゃんが私の手首を掴んで立ち上がらせる。
「どこ行くの?」と聞いても「内緒です」と言われながら引っ張られ、少しよろけてしまう。
あれ? 立ってみて気付いたけど、ユキちゃんって私より身長高かったっけ?
辛うじてギリギリ私の方が身長高かったはずなんだけどなあ。




 ***




「……、えっと……」



連れてこられたのは忍たま五年生が普段から使っている長屋。
……の久々知君と尾浜の部屋。
ユキちゃんは私を久々知君達の部屋に入れると、「連れてきたぞ」と言いながら不破雷蔵に姿を変えた。
いや、正しく言えば、はちや三郎がユキちゃんに変装していたのだ。



「ありがとう、三郎」
「おう。じゃあ、また後でな」



お互いに笑みを浮かべ、はちや三郎は軽く手を振りながら背を向けて行ってしまった。
唖然としていると、久々知君が「騙してしまってすみません」と苦笑しながら言う。
慌てながらも「い、いや、大丈夫」と返事をする。



「この前の出かけると言った件で話をしたかったのですが、くのたま長屋は罠だらけで行けなくて」



それで先程のはちや三郎に連れてきてもらったんです。
そう言う久々知君に「成程、そういうことだったのか」と納得する。
「とりあえず座ってください」と言ってくれる久々知君に、私は緊張しながらも久々知君の前に正座で座る。
や、やべー、どうしよう、緊張して足も手も震えてやがる……。



「次の休みっていつですか?」
「え、えっと、三日後、です」
「三日後……、調度午後から授業がない日です。その日にしましょう。良いですか?」
「あ、うん、もちろん」



ぎこちなく頷くと、「良かった」と微笑む久々知君。
おんぎゃあああああ! 正面でしかも私にだけだあああああ!
「は、はひ」と無意識に声に出してしまいながらも、私は顔がこの上ない程熱くなるのを感じた。
ま、まずいな……、このままいたら私の理性が危ないかもしれない……。



「じゃ、じゃあその日、支度出来たら迎えに行くからっ」
「え、でも、」
「私ちょっと用事あるからお暇するね、ごめんねっ!」



久々知君の言葉を無視し、早口でそう言った後、私は久々知君の部屋を勢い良く走って出た。
走りながらもドクンドクンと心臓がうるさく鳴り、胸元を手で触れる。
あんなに近くであんなにたくさん話して、頭が真っ白になりそう。
……でも、こんなんでデート大丈夫なのか……!?




 ***




「……顔赤かったけど、風邪だったのかな? 悪いことしちゃったな……」

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